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あみだくじ 4
たった二秒程度のその目の動きに、心臓がバクンと高鳴った。
この人、絶対エロいって。
はあっと溜息を吐く薄い唇、苛立たし気に掻いた首の太さ。
冷たい視線で見下ろして罵って欲しい。
邪なフィルターで観察してしまい、焦って頭を振った。乱れた金髪を整えながら足を踏み出そうとしたとき、低い声が呼び止めた。
「あの、良かったらカフェに付き合ってくれません?」
「んはあ?」
素っ頓狂な声で応えてしまい、急いで口元を隠す。男は訝しげに目を細めたが、人差し指と中指で煙草を持つ仕草をしながら付け加えた。
「吸える場所、近くにあるんですよ」
断る理由はなかった。
喫煙所から二分の場所。再開発に置いて行かれたような古びた四階建てのビルの二階の隅に、全席喫煙の喫茶店がひっそりと居を構えている。鐘二は重い木扉をぐっと引いて、同行者を促した。
キノコ頭のそいつは、気まずそうに頭を下げて先に入る。赤いセーターとブラウンのチノパンの後ろ姿を見るに数センチ自分より背が高い。
彼は店員が来る前にと振り返って尋ねた。
「あ、どの席にします?」
「俺は長居するから、レジ裏のソファがいいですね」
「じゃあ、そこで……」
店内は既に白い煙の海で、神経を無理やり押し広げるような香りの波に身を委ねる。
席に座るや否や、二人同時に黒い箱を取り出した。
「同じ、じゃ……ないか」
「オレずっとこれなんすよね」
自分の右手にはピース、相手はブラメンだ。
ライターは互いにこだわりがないようで、百均のパステルカラーを握りしめて火をつける。ふうっと一息吐いてから視線を重ねた。
「芦馬鐘二だ」
「え……あ、卵塚遥望です」
「変質者でもナンパでもない。喫煙所だと思って自由に帰ってくれ。ここは昼時一人客だと敷居が高くてね。ああ、ランチぐらいなら奢るが」
卵塚は口を半開きのまま頷いていたが、最後の誘いに両手を振った。
「いやいやいや。オレは吸える場所もらえただけでいいっす。それより、芦馬さん、あの……この辺なんすか」
「ああ、徒歩圏内だ」
「その、オレすぐそこの雑貨屋で働いてて。もしかしたらお客さんで来たことあるかなあって」
「雑貨か。あまり興味ないな」
「そっすか……あの、やっぱ、ランチ頼みます」
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