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第1話

この気持ちが本気だったらいつかその意味がわかるよ……そう告げられた彼と不確かな約束を交わす──── ~ブルーミントグラデーション~ * 「ななちゃんは、彼女とかいないの?」 「いません。それに、その呼び方やめて下さい」 「なんで?可愛いじゃん」 「可愛くないし」 「あの…こんなとこに居てスタッフさんに怒られないんですか?」 「今日はもうさすがに撮影ないし大丈夫だって。だからななちゃんとおしゃべりしたくて来たんだよ」 「いや、俺と話しても楽しくないですよ」 「そんなことないよ、ななちゃんはオレの癒しだから」 「だからどうして俺が癒しなんですか」 「それは内緒」 「またそれだ」 「とにかく癒しなの。あ、食器洗いまだ終わらないの?」 「まだです。そんなに暇ならそこのダイニングテーブル拭いてください」 「おう、いいよ」 俺の目の前でダイニングテーブルを拭きながら俺をからかってるだけのこの人は青葉亮介(アオバリョウスケ)、29歳。 多分、知らない人を探した方が少ないんじゃかってくらいの人気俳優だ。 スラッとした長身で、ちょっとだけタレ目の目が見え隠れするくらいのクセ毛なラフな髪。甘いマスクとは対象的なずば抜けた演技力。 一時期より人気は落ち着いたようだけど、ドラマや映画は今だって主役級な役ばかりで十分今も人気だ。 で、俺はというと同じ芸能人なわけもなくごくごく普通の一般人。 どこにでもいるただの冴えない大学一年生だ。イケメンでもないし彼女だっていない。かろうじて自慢出来ることって言ったら生まれつきのほんのり茶色で柔らかい髪くらい。 女子からは、女の子みたいに綺麗な髪だねっていつも言われてた。 髪が綺麗だからってモテるわけもなく、結局平凡な人生をひたすら歩んでいる。 ちなみに、亮介さんが“ななちゃん”と呼ぶのは俺の名前が七倉(ナナクラ)だから。女みたいで嫌なのに下の名前も葉月(ハヅキ)ってまた女みたいな名前だから結局どっちもどっちなんだけど。 …そんな平凡な一般人の俺と亮介さんが何故出会ったのか─── 都会でのんびり一人暮らししながら大学生活を送りつつ、これから夏休みだって時に実家から連絡が突然来た。 それは8月から約3週間、離島で民宿を営んでる親戚のばーちゃんの手伝いをして欲しいと言う内容で、そしてその話には続きが。 その3週間の間、ばーちゃんの民宿を貸切で泊まりたいと言うのが人気俳優の青葉亮介だった。 民宿近くの海で単発のドラマ撮影があって、それで撮影スタッフとキャストが滞在するのにちょうど良いのがばーちゃんの民宿だったとか。 とりあえずばーちゃんの民宿にはスタッフ数名と亮介さんとマネージャーの岡田さんが滞在し、他のキャスト陣やスタッフはまた近くの民宿に滞在するらしい。

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