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第2話

そんなこんなで俺は妙なことに巻き込まれながらも、本物の青葉亮介を見れることがちょっとだけ楽しみだった。 芸能人なんて別世界の人だから、初めて本人を見て挨拶をした時は少しテンションがおかしかった。 だって、こんなこと一生に一度あるかないか……普通はないだろ。 だから緊張感と妙な高揚感とがマックスで、正直その日のことはよく覚えてない。 ただ、亮介さんは最初から気さくに話しかけてくれて、テレビで見てたイメージとは少し違っていたことはよく覚えてる。 そしてその初対面の時に初めて“ななちゃん”と呼ばれた。 『はじめまして、ナナクラ ハヅキです』 『はじめまして、よろしくな。名前珍しいな、ナナクラって』 『漢数字の七に倉庫の方の倉で七倉です』 『へー。じゃあ、ななちゃんだな』 『え?』 『七倉だからななちゃん』 『なな…ちゃ、ん…』 それからずっとそう呼ばれ、亮介さん達が来て二週間経った今では岡田さんやスタッフさんにまでそのあだ名で呼ばれるようになってしまった。 そんな出会いから二週間、 こんな日常が当たり前になりつつあるのがちょっとこわいって言うか、今だって芸能人と世間話を普通にしてんだよ? 感覚がおかしくなりそうだよなぁ…いや、もうなってるのかなぁ… * 「ななちゃん?」 「…………。」 「なーなーちゃん。おーい!」 ふと色々思い出していたら亮介さんの声で我に返った。 「……あ、すいません。何ですか?」 「ボーとして大丈夫か?」 「……ちょっと考え事してただけですから大丈夫ですよ。」 「そっか。あ、テーブル拭くの終わったけど、次なにする?」 気付けば布巾を片手にいつの間にかキッチンへ来ていた亮介さんがいて、目の前のテーブルを見るとすっかりと綺麗になっていた。 「ありがとうございます。亮介さんは明日も撮影あるんですからもう大丈夫ですし、早く休んでください」 「ちょっとー、ななちゃんと話がしたいから手伝ったんだぞ?そんなこと言うなよ」 さっき夕食の時に聞こえてきた話では、撮影も予定通りならあと一週間で終わりで明日からは更に重要なシーンの撮影に入るとか。 だから俺なんか構ってる暇あるなら身体休めたらいいのに。 「明日から重要なシーンだってさっき聞こえて来ましたよ、台本とか読み直したりしないですか?」 「台本…か。そうだ!いいこと思いついた!」 洗い物もやっと終わり蛇口を閉めてエプロンで手を拭いていると、突然声をあげ何かを思いついた亮介さんが俺の手を取る。 「え?!どうしたんですか?」 「ななちゃん、台本の読み合わせ付き合ってよ。明日撮るシーンの」 「そんな、俺には無理ですよ!」 「大丈夫だって。ちょっとそこ座って待ってて、台本取ってくるから。」 そして5分後、ダイニングルームで本当に2人だけの台本の読み合わせが始まってしまった───

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