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第52話 プランA発動【LY】/軟膏の効果【KK】→
【LY:冥界】
リリムはフェリムと共に花壇の花に水やりをしていた。
ハデスに貰った水仙は、竜の顔を一飲みにできそうなほど大きな花を咲かせた。
そんな水仙が、居城とスパ、滝と汚水処理場の周囲に植えてある。
「水仙、大きく育ちましたねぇ」
水やりをしながら、フェリムがほのぼのと笑んだ。
「見た目も可愛いし、瘴気を綺麗にしてくれて、助かるな」
リリムはスパを見回した。
冥界に降りてくる魂が、フワフワと湯に浸かって穢れを落としている。
「お湯を出た後に、寛げるような休憩所とか、娯楽室もあった方がいいだろうか」
「それは良いですね。魂もリラックスできて、次の世界に旅立つ準備も捗りそうです」
「輪廻が巡るな。湯上りの水分補給に、コーヒー牛乳とイチゴ牛乳の自販機も設置しよう」
最近出来上がった六個目のスパを眺める。
竜のミケが気持ちよさそうにお湯に浸かっている。
「ミケがリラックスしているせいか、魔力が戻って、アメリア様も神力を取り戻してきたようですよ。ハデス様とお話しできる時間も伸びたそうです」
ハデスは元冥界の魔王として魂の扱いに長けているから、今のアメリアとは話しやすいらしい。
リリムは、ハデスを通してアメリアの言葉を聞いている。
「流石、魂のスペシャリストだ。僕も見習いたい」
「リリムなら、すぐになれますよ。もうすっかり立派な冥界の魔王です」
フェリムが褒めてくれた。
リリムは周囲を見回した。
冥界は、来た当初より整った。
(前任の冥界の魔王ハデス様に、魔王の極意も習った。そろそろ、頃合いか)
『ラス、そちらの守備は、どうだろうか?』
耳に手を当てて、ラスに念話を飛ばす。
ラスにはずっと、地上の偵察をお願いしていた。
『こっちもOK~。アメリアが呼んだ使者とカロンが話したみたいだよ』
『原作者を呼ぶ、と話していたな。接触できたんだな、良かった』
原作者とどんな話をしたのか気になるが、それ以上に陽向は『魅惑の果実』の大ファンだから、会えて喜んだに違いない。
(僕が会うより、主人公のカロンが会うほうが実りがあるはずだ)
という理由で、カロンを推挙した。
アメリアは当初、リリムと会わせるつもりだったようだが、断った。
(今のリリムは、夢野先生が書いたリリムとは別人だ。きっとがっかりさせてしまう)
リリムの勘は大当たりだったが、それをリリムが知る由はない。
『では予定通り、大天使メロウ捕縛作戦を決行しよう。まずはプランA発動だ。ラス、フェリム、よろしく頼む』
声に出して、ラスとフェリムに同時に語り掛けた。
『ラジャ~』
「お任せください、魔王様」
フェリムが胸に手を当てて仰々しく頭を下げた。
曇天の空は前より明るくなって、雲の隙間から光でも降りてきそうな雰囲気だった。
〇●〇●〇
【KK:地上】
「今日はシェーン、遅いなぁ」
魔法訓練室で、カロンは一人、訓練を始めていた。
光の矢は魔力の濃度も濃くなって、威力も増した。
これも一重にシェーンのスパルタ訓練のお陰だろう。原作者に貰った魔力増強の軟膏も役に立っているのだろうが、訓練のほうが辛いから成果だと思いたい。
「遅くなって、ごめんね、カロン」
シェーンが慌てた様子で入ってきた。
「どうしたの? 何かあった?」
「いや、何もないよ」
シェーンがいつもの様子で笑む。
態度が何処かソワソワしていて、怪しい。
じぃっと見詰めたら、目を逸らされた。
「今日はルカとカデルが戻ってくるはずなんだ。もしかしたら、レアンも戻るかもしれないから、久し振りに全員が揃うよ」
「そうなんだ」
リリムが冥界に立ってから、もう十日が経過している。
いまだに冥界への門を開けてもらえない状況に、いい加減ヤキモキしていた。
「じゃぁ、ちょうどいいや。先にシェーンに塗っとくよ」
「塗る?」
不思議そうな顔をするシェーンに、カロンは例の軟膏を見せた。
「魔力増強する軟膏。ついでに、異物も発見できる」
「異物? あぁ、天使に憑依された時みたいな?」
「ん、そんな感じ」
あまり詳しい説明ができないので、ざっくり話す。
「手がいいかな。シェーンは耳 だから、耳が良いかな」
軟膏を指にとって、シェーンの両耳に塗る。
念のため、両手にも伸ばした。
「うわぁ、凄い。本当に魔力が増すね。即座に実感できるって、かなり強力アイテムじゃないの?」
「特別仕様の、俺しか持ってないアイテムだから。『神実』、凄いだろ。入手ルートは秘密だけど」
「いや、カロンだったら、どう考えてもアメリア様関係でしょ」
その通りだが、シェーンが自分で納得してくれたので良かったと思った。
この小説の原作者から貰いました、とは言えない。
夢野迷路は女神アメリアに呼ばれた使者だから、シェーンの指摘は当たらずとも遠からずだ。
(塗っても変化がないってことは、シェーンに憑いてるわけじゃないんだな)
虫食い持ちのメロウの核や魂が隠されていたら、何らかの変化があるはずだ。
この調子で『五感の護り』全員に塗って、試してみようと思った。
(夢野先生の発想的に、リリム以外なら『五感の護り』にメロウを憑依させそうな気がする。試す価値はある)
カロンはもう一度、自分の手にもしっかり軟膏を塗りつけた。
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