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第37話(LOVE)
「い……ぃ」
快感が痺れとなって襲ってくる。胸部と股間、それぞれが主張し、また激しい欲求に叫んでいる。
「うう、うう」
部屋から声が漏れてはいけない――そう思えば思うほど感じてしまう。血流が速まり、股間に集まってきて暴れまわる。
解放されたいと思う裏でまだ足りないと足掻く。
「一度出して楽になったらどうだ?」
「ヤ、だ……だ、って」
キスされて乳首をいじられただけでイクなんて嫌だ――そう言いたいのに、続きが出てこない。はう、はう、と息を吸おうともがくだけだ。
中途半端に勃っている璃斗のものを豊湧が掴んだ。その瞬間、璃斗の体がビクンと大きく跳ねた。救いを求めるように強い力で豊湧にしがみつく。
「ぁ、あう」
前後にゆっくり優しく撫でられて、璃斗のものは完全に目覚め、一気に膨張した。
「いい……」
「心地よいか?」
うんうんうん、と何度も激しくうなずく。
「楽になろうか」
言葉と同時に豊湧が掴む力が強くなり、上下への動きも激しくなって強くしごいてくる。
愉悦が璃斗を包み込み、目の前がクラクラする。
「ゃ、でっ……!」
体の中で暴れまわっている堪らない悦楽が膨張し、爆発した。
我慢していたものが解放され、体から霧散していく。
「璃斗」
遠くで豊湧の声がする。だが、動けない。
(心地いい……豊湧さんの声)
璃斗の中に浸透してくる穏やかな声音。奥底にある心をそっと包み込んでくれるような気がする。
(なんて、優しいんだろう)
ふわふわする。充実感に満たされて、体か、心か、自分のなにかがどこかへ行ってしまいそうだ。
チュッチュッとリップ音が聞こえる。音に気づくと、感覚も追いかけてきた。
腹部を執拗にキスされている。その一回一回がまるで熱を刺し込まれているような錯覚を抱かせる。
豊湧の手が脇からゆっくり下がってきて、腰に触れ、太ももに至る。ソフトなタッチがなんだかとても淫猥に思え、璃斗は新たな欲望に掻き立てられた。
「ほう、ゆ……さん、また、き、た……っ」
手と同じように腹部を愛撫していた舌も下りていく。茂みにいたり、そこを掻き分けてさらに進み、極地に辿り着いた。
「は、うぅ」
陰茎をなぞっていく。すでに力を持ち始めている璃斗のものは、なまめかしい舌の感触にさらに膨張し、血管が浮き上がっている。そのわずかな段差で舌先が踊り、陰茎がふるふると震えた。
「は、や……ぅ」
先ほどとは比べ物にならない強烈な欲望の塊が渦巻き、璃斗はシーツを逆手に鷲掴みにして耐えた。
次を、頂点を、爆発を求めて自然と腰が浮いて揺れる。
「私も、そろそろ限界だ」
小さく漏れた言葉。耳に届くと同時に肛門に激痛を走り、その衝撃で二度目の放出をしていた。
「い、つぅ……ひぃぃ」
両手で口を押え、必死に耐える。
肛門は侵入してきた異物を外に追い出そうと戦っている。
(いいんだ、受け入れてよっ。戦わないでっ)
自分の体なのに思うようにならない。そしてこんなに苦しんでいるというのに、豊湧は容赦しない。和らげるために四方八方刺激しくる。璃斗の抵抗など物ともせずに奥へと進め、とうとう激地にたどり着いた。
「ここか」
「うぐっ!」
妙な感覚がしたかと思えば、ズンと突かれるとすさまじい快感が襲ってきた。
「ひ、やぁああ」
目の前をいくつもの白い光が飛んで、チカチカする。体の中から爆発が起こりそうで、意識まで引き飛ばされそうだ。
だが、すぐにその感覚は消えた。指が抜かれて解放されたのだ。
「璃斗、これからだ。力まずに」
耳もとで囁かれ、意味を察する前に新たな衝撃が来た。
「!!!」
今度こそ意識が飛んだ。一瞬、すべてがわからなくなった。
すっと引かれてまた突かれ、呼び戻された意識はまた遠くに放り投げられた。
「あ、あ、あ、あ」
男神《おしん》たるものが璃斗の中にあり、ゆっくり大きく前後する。時間をかけたストローク、その動きに呼吸が取られる。
引かれて息を吸い、突かれて吐き出す。
それを何度か繰り返していくうちにストレークは短く速くなって、快感が増幅し、璃斗は言葉にならない悦楽に満たされた。
呼吸を合わせて共有したい絶頂の世界を手繰り寄せようとする。二人の手はそれぞれ指を絡めて、しっかりと握り合っていた。
璃斗は息を止め、歯を食いしばった。
果てへ。
二人の体がブルリと震え、そして一気に弛緩する。虚脱した璃斗に豊湧がキスをする。
「そなたは名実ともに私のものだ」
「豊湧さんこそ。でも……」
「ん?」
「神様を自分のものだなんて言ったら、罰が当たるのかな」
「今の私は神力を制限されているから半人前だ。罰など当たらない。だが、そうだな。私が良きものを得たという祝いに、そなたに関わる者たちに吉《きつ》を授けよう」
「僕に関わる者……って?」
「例えば、真二郎は当然として、仕事の取引先、客、それからそなたに横恋慕している男」
「高須にまで? いいの?」
「めでたきことに分け隔てをしてはありがたみが減る。それに、よろしくない者にも吉は必要だ。不幸ばかりでは、人は更生の欠片を手にすることはできぬからな」
さすが神様だ、心が広い――そう思う璃斗であったが、言葉では言わず、口づけることで応えた。
「ずっと傍にいて……浦島太郎になってもいいから、あなたと一緒にいたい」
「そなたに時渡りなどさせぬよ。私がここにいて、愛しいそなたたち兄弟を守るのだから」
額に唇が触れた。
璃斗は全身で口づけの誓いを受け止めた。
「僕だけの、神様」
両腕でしっかりと抱きしめ合った。
終わり
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