148 / 207
第148話
その日の夜。
昼間に伝えられていた通り、リオールが後宮にやってきた。
アスカと同じ寝台に座り、身を寄せ合いながら会話を楽しむ。
「──陛下、少し、ご相談が」
「ああ、なんだ。いいことか?」
「私にとっては、とても。陛下にとっては分かりませんが、いいことであれば嬉しいです」
そう言って、リオールの手に触れたアスカは、期待を込めた瞳で彼を見つめた。
「私と、逢瀬をいたしませんか?」
「逢瀬……!」
「はい。秘密で街に出て、普通の恋人同士と変わらない、逢瀬をしてみませんか?」
リオールの目が僅かに見開かれ、そして手元に視線が落ちる。
何も言わなくなった彼に、緊張して心臓がバクバクと音を立てているが、気付かないふりをして涼しい顔を繕った。
「……それは、何故だ」
「え……?」
「私は、知っているぞ。そなたがお忍びで街に視察に行きたいと言っていることを」
「!」
まさか、彼はもう既に全てを知っていたのか。
アスカは気まずさから視線を逸らし、そっと手を離した。
「私の恋心を弄んだな」
「そんな! 私は……視察に行きたいのも本当です。しかし、陛下と秘密で逢瀬を重ねるのも、楽しいだろうなと思ったのも、事実です。……弄ぶだなんて……ひどい」
「!」
むにっと下唇を突き出したアスカに、リオールは胸を高鳴らせ、思わずその身体を抱きしめていた。
「じょ、冗談に決まってるだろう! そうだな。一石二鳥だ。共に行こうでは無いか」
「……本当に……?」
「当たり前だ。私は嘘は言わないぞ」
それはつまり──許可、ということ。
アスカの瞳がぱっと輝き、口元に笑みが咲いた。
「ありがとうございます……陛下、愛しています!」
「それは……ずるいぞ……」
囁くように言った彼が、そっとアスカの額に唇を落とす。
そのまま、押し倒されるように寝台に寝転んだアスカは、衣の裾から差し込まれた手にドキリとした。
「陛下……リオール様、もう、お話は終わりですか……?」
「なんだ。今ならまだ間に合うが、他に話があるか」
「ふふっ、ありません。私も陛下に触れたいです」
リオールの顔に手を添えて、そっと唇を重ねる。
彼は柔らかく目を細めると、止めていた手の動きを再開させた。
ともだちにシェアしよう!

