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8.仲良く

 なんか、絶対、変な話だとは思う。  もし、友達が、こういうことがあったんだけど、どう思う? とオレに聞いてきたら。  怪しすぎるから、そんなのやめなよって、絶対言ったと思う。  でも、なんだかオレは――目の前に居る、この人を、信じられる気がした。  まあ、あんな肩書きがある人が、オレ相手に詐欺を働いたりしないだろうってのはあるけど。  ――なんだろ。綺麗な紫の瞳と、その表情や言葉の端々にでる人間性、みたいなのを。  信じてもいいかなと、何故か思えてしまった。というか。  もしもこれで、何か騙されてるなら、もうそれはそれで仕方ないや、とか思うほどに。 「――よろしくお願いします」  そう言ったら、北條さんは、ホッとしたように笑った。 「ありがとう。よろしく。後悔はさせないから。戸籍の件が大丈夫なら」 「それは本当に大丈夫ですよ」  ふふ、と笑ってしまう。 「――オレと結婚する上でさ、お父さんには、Ωだったこと、話す?」 「あー……でも、北條さんは、Ωと番になった、てしたいんですよね?」 「うん。そうだね。オレがβと結婚するとかは、あんまり現実的でないかな……そういうカップルも居るんだろうけど、Ωと番になりましたっていうのが、一番しっくりくる」 「ですよね……じゃあ、父には実はΩでしたって言います」 「契約のことは」 「それは言いませんよ。父にも、ちゃんと結婚するって言います――ていうかたぶん、喜びますよ。北條グループと、コネができるんですもん」  あーなんか嫌だな。喜ばすの。と思っていると。 「それだと、離婚する時、何か言われない?」 「別にその時はもう、オレ、学生じゃなくて医者になって、父の保護下から出て生活出来てる筈なので、関係ないです」 「……そっか。そうだね。それにオレ、その後のことも、君が困ってたら、助けるから、大丈夫だよ」 「三年の後も、ですか?」 「うん。一生。何かあったら、助けるよ。それくらい。オレにとって、この三年間は、大事だって、思ってくれていいよ」  なるほど。そうなのか。  ――何をするんだろう、そこまでして、この三年で。なんかまだ今は聞くような関係じゃないと思うけど。三年後。完成した時が楽しみだなぁ。 「じゃあさ、とりあえずここの料理、美味しく食べよ。今日、時間ある? 色々話、詰めてもいい?」  帰って勉強しようと思ってたんだけど……でも、今日この話を詰めて頑張れば、これから、父のお金を使わずに勉強できるってことだし。 「はい」  頷くと、北條さんはクスクス笑った。 「――食べてる間に、オレの秘書と弁護士、呼ぶから、一緒に色々話そうね。一応そこにだけは、オレは話しておくつもり。ああ、弁護士は、オレの親友――というか悪友なんだけど」 「そうなんですね」 「凛太くんは、話しておきたい人、いる?」 「んー……オレも、オレがΩって知ってる友達が一人だけ居るんですけど。その友達だけ、話してもいいですか? なんか、すごく喜んでくれちゃいそうで、なんかそれだと悪いので」 「――ん。いいよ」  北條さんは、オレをじっと見つめた後、ふ、と瞳を優しくした。 「なんかオレ、君のことが、ちょっと可愛いかも」 「え。何でですか?」 「なんだろね。いい子な気がする――話しておきたい理由が、なんか可愛い」 「そうですか?」  良く分かんないけど。 「仲良くやってこ。三年間。運命共同体だからさ」  ふ、と笑って、北條さんはオレを見つめた。 「はい。そうですね」  なんとなく、仲良くできそうな気がする。  こんなαもいるんだなぁと、オレの常識が、ちょっとひっくり返った感じ。

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