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104.おそろい
買ったお土産を持って、瑛士さんの側に早足で近づく。
「お待たせしました」
「ん。凛太は、他の店も見たい?」
「もう大丈夫です。瑛士さんは?」
「オレも買い終えてる。じゃあ、車に行こっか」
はい、と返して、一緒に歩き始める。
店内を歩き始めると、すぐ瑛士さんへの視線を感じる。外を歩いてる時よりやっぱり目立つみたいだけど、瑛士さんは全然気にしてない。なんだか、めちゃくちゃニコニコしている。
「どうしてそんなにニコニコなんですか?」
「んー、オレ、凛太にぴったりなおみやげ見つけちゃった気がしてさ。早く見せたくて――とか言って、全然的外れだったらごめんね」
途中から苦笑しながら言う瑛士さん。
オレはそれを聞いて、すぐに首を横に振った。
「瑛士さんもさっき言ってくれましたけど……なんでも嬉しいと思うので」
「ん。そうなんだけどね。反応が楽しみで。なんて言うかなあ。早く見せたい」
「そんな風に言われると、良い反応、考えておかなきゃいけない気が……」
冗談交じりに笑いながら言ったオレの言葉に、瑛士さんはちょっと間を置いて、微笑みながら言った。
「――そんなのできないでしょ凛太。凛太の反応は素直だから、面白いんだよね」
「面白い、ですか?」
オレ、そんなに面白い反応してるかな?
ちょっと不思議に思いながら、瑛士さんを見上げると、瑛士さんは、ふ、と面白そうに微笑んだ。
「凛太のこと思いながら、選ぶの、とにかく楽しかった」
そんな風に言われると……なんかすごく、嬉しくなる。
……瑛士さんに、あのペンギンで良かったのかなぁと、また一瞬思うけど。
相手のことを思いながら選ぶっていうのが大事なら。きっとあれでいいのかなと思い直す。
駐車場について、車に乗り込むと、瑛士さんが楽しそうにオレの方に体を向ける。
「じゃあ、凛太、はい」
「ありがとうございます。瑛士さんも。どうぞ」
「ありがとう」
お互い渡しっこをして、ふふ、と顔を見合わせて笑う。瑛士さんから貰ったものは、なんだか固くて重かった。
開けよう、と瑛士さんが言う。
「あ。可愛い。ペンギンのお菓子。一緒に食べようね」
クスクス笑う瑛士さんに、はい、と頷く。なんとなく、瑛士さんが開けてからにしようと思って待っていると、小さい紙袋から、キーホルダーを取り出した。
「――――……あ」
ペンギンの赤ちゃんのキーホルダーをじっと見つめて、瑛士さんがちょっと固まってる。
「……こどもっぽすぎましたか? あの……なんかこれなら、こっそり持てるかなと……」
ひゃー、なんか急に恥ずかしくなってきた。もっとちがうの選べばよかったーと、心の中でじたばた暴れていると。
瑛士さんが、ふんわり優しく微笑んだ。
「――さっき、これ、オレも見かけて、凛太に似てるーて思ってたんだ」
「え」
「まあ正確には、凛太に似てるって言った赤ちゃんペンギンそのままだなぁって思って見てたんだ。それで……」
「……?」
「ちょっとごめんね」
瑛士さんは、オレに渡したお土産袋をちょっと覗いて、取り出した小さな紙袋を、はい、と手渡してくれた。
……え。もしかして。
ちょっとドキドキしながら袋を開けると、中から出てきたのは――おんなじキーホルダー。
なんだかもう、何も言えなくて、瑛士さんの顔を見つめてしまう。
「――お揃いだね」
クス、と瑛士さんが笑う。
胸の中、ほんわかしすぎて、頷いていると。
「ありがとね、凛太。大事にする」
「……オレも。大事にします」
同じのが二つ。
期せず揃ったりがなんだか嬉しくて、きゅ、と握りしめた。
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