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第11章 (2)
『好意』の種類が違うものへと変化したのは、いつだったのか。
むろん、はっきりと自覚した瞬間は憶 えている。だが、それよりももっとまえから、彼への気持ちは育 まれていたのではないかと思う。
ヴィンセントと知り合って、はじめて本当の恋をした。
身も心も包みこまれるやすらぎを知り、愛される悦 びを知った。
幸せで嬉しくて、ただ傍にいてくれるだけで心があたたかくなる。そんな充足感を得られる、かけがえのない存在と出逢えた。それだけで充分だと思っていたのに、今日、皆のまえで正式なパートナーとして生涯の愛を誓い合い、祝福を受けることができた。
そこに、公的な効力はなにもない。それでも自分にとっては、これ以上ないほど大切で、意味のある誓約だった。
――あなたが好き。あなただけを愛してる。この先の人生も、あなたとともに生きていく。ずっと……。
「あぁ…っ」
巧みな愛撫を施す恋人の手が、ゆるく兆 した性器に触れた瞬間、莉音は喉を仰 け反らせ、甘い嬌声を放った。
すでに先端から蜜を溢れさせているそれを、大きな掌に包みこまれて扱 かれ、親指の腹で敏感な部分を刺激される。性の知識に乏しく、それまでなんの経験もなかった莉音は、ヴィンセントからすべての手ほどきを受け、その扉を開かれた。
ヴィンセント自身、同性との経験は皆無 で、そもそもそういう対象ですらなかったという。だが、そんな様子は微塵も感じられなかったし、莉音の目にはひどく物慣れているように見えた。だから最初のとき、すべてを委 ねて丸投げにしてしまった。けれども実際は、無理な行為で負担をかけ、莉音の身体を傷つけてしまうのではないかと終始ヒヤヒヤしていたらしい。
あとになって聞かされて、とても驚いたことは言うまでもない。同時に、はじめて関係を持った日の翌日、ヴィンセントが過剰なまでの気遣いを見せ、一日中自分の傍から離さなかったのは、そういうことだったのかと理解した。
あらゆることに精通した、完璧で非の打ちどころのない存在。
莉音にとってヴィンセントは、つねに遙か先を行く、だれよりも優れた格好いい大人の男性だった。
しかし、どれほど高い能力と知性を備えて社会的成功をおさめていたとしても、ヴィンセントもまた、ひとりの人間として悩み、迷うことはあるのだ。わからないことや知らないこともあれば、不安になったりミスを犯すことだってある。そんなあたりまえのことを、莉音はこれまで気づきもせずにきてしまった。ずっと、完璧なのがあたりまえと思ってきたからだ。
自分たちはもっと、互いをよく知る努力をしたほうがいいのかもしれない。あらためてそう思う。
どちらか一方が我慢をしたり気遣ったりするのではなく、また、支えられたり守られたりするのでもなしに、ともに思いやりながら支え合っていける、そういう関係でいたい。
未熟な自分では、まだまだ頼りないことのほうが多いだろう。それでも好きな人がつらいときや悩んでいるとき、支えになれて、弱い部分も安心して見せてもらえる関係になりたい。
祖父が頭ごなしに反対してくれたことで、この関係を見直すことができたように思う。同性をパートナーとして生きることへの覚悟もできた。
この人としっかり向き合って、これからの人生を歩んでいこう。
「……っあ、や……っ、アルフっ、さ…っ……」
不意に大きく両足を割りひろげられて、莉音はあられもないその格好に狼狽 えた。
直後、巧みな愛撫によって勃ちあがった陰茎を、拒む間もなく口に含まれる。舌先で蜜口をくすぐられ、すぼめた口唇にしっかりと銜 えこまれながら強弱をつけて刺激を与えられる。敏感になっている昂 ぶりをきつく吸われ、肉厚の舌に丁寧に裏筋を舐め上げられて、莉音は悶えながらイヤイヤとかぶりをふった。
己の股間に顔をうずめられる行為は、何度経験しても慣れることはなく、羞恥がまさってしまう。どうしようもなく恥ずかしいのに、だからこそ与えられる快感が強烈で、抗うことができなかった。
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