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第11章 (3)
「アルフさっ……、ダメッ、はなっ…てっ。出ちゃ…っ……! お願…っ、放してっ。も…っ、出ちゃう、からぁ……っ!」
必死の懇願にもかかわらず、ヴィンセントは逃げを打つ莉音の腰を力尽くで引き戻し、ガッチリと押さえこんで口淫をさらに強めた。
もともと性欲自体、薄いほうだと思う。東京を出てきてからはなおのこと、鬱々とする日々がつづいて、そういった方面の欲求からは遠ざかっていた。ましてや関係が気まずくなっていた祖父の家が滞在先なのだから、当然である。ただでさえひさしぶりだというのに、好きな人の手で高められているとあって、さらに昂揚してしまった。
あっというまに限界が訪れて、莉音は懸命にヴィンセントの口から己を引き抜こうとする。だが結局間に合わず、恋人の口に含まれた状態で果ててしまった。
頭の中が真っ白になって、全身ビクンビクンと痙攣する。恋人の口の中に吐精してしまったことがいたたまれず、恥ずかしくてたまらないのに、身体は心地よい解放感に満たされた。
脱力した状態のまま荒い呼吸を繰り返していると、ようやく口淫を解いたヴィンセントが顔を上げ、いたわるように莉音の頭を撫でた。莉音が口の中に放ってしまったものはすでに飲み下されていて、それが余計に羞恥を煽る。だが、呼吸が整う間もなく腰の下に枕をあてがわれ、さらにまる見えになってしまった後ろのすぼまりをベロリと舐められてしまった。
「やぁあぁぁぁ――……っ!」
甲高 い嬌声が迸 ると同時に、その背が大きく撓 る。閉じようとする足をしっかりと押さえこまれ、高く腰を抱え上げられて秘めたる場所を恋人の目の前に曝された。
「や…っ、ダメッ……、これダメ…っ……アルフさっ…ひっ――あぁあぁー……ん……っ!」
足をバタつかせながら懸命に拒もうとしたのに、あっさりとその舌先を後孔内に迎え入れてしまい、莉音は全身を反り返らせた。
今夜のヴィンセントは、まるで容赦がない。いつもは莉音の様子を見ながら行為を進めてくれるのに、その余裕が少しも感じられなかった。
性急で、強引で、驚くほどに猛々しい。
いつにない荒々しさが少し怖かったが、あのヴィンセントが、理性的に振る舞えなくなるほど強く求めてくれているのだと気づいた途端、莉音の箍 も一気にはずれた。
本来、排泄のための器官であるその場所を舐められるのは、性器を口に含まれる以上に恥ずかしく、抵抗がある。だが、愛する人と繋がれる唯一の場所でもあり、その欲望を迎え入れることが、なによりの歓びとなっていた。
相手がヴィンセントだからこそ、受け容れられる行為。そして感じられる快楽。
何度も求められ、愛されたことで、その場所は快感を得られる器官へと作り変えられていった。
「……っは、ァッ……んんん~……っ……!」
差しこまれた舌に内壁を犯され、莉音は顔を真っ赤にしながら甘美な愉悦に翻弄される。
羞恥が消えることはなかったが、ヴィンセントが与えてくれる快感を、莉音はいつしか理性を捨てて貪っていた。
もっともっととせがむように自分から足を開き、媚肉 を侵蝕する舌を誘いこむように腰を揺らす。そんな莉音が見せる痴態に満足したのか、ヴィンセントはようやく舌を引き抜くと、身を起こしてベッドサイドに腕を伸ばした。
いつのまに用意されていたのだろう。ナイトテーブルに置かれていたローションを手にとると、封を切って中身をみずからの手に垂らし、全体に馴染ませながら、ひくつくすぼまりの周辺にも丁寧に塗りこめていった。
瞬間的に身構えたことがわかったのだろう。ヴィンセントは身をかがめてなだめるように額に口づけると、こめかみや頬、鼻の頭にもキスの雨を降らして最後に口唇を奪った。
幾度も啄 むようなキスを繰り返し、徐々に力が抜けてきたところで薄く開いた口唇の隙間から舌を割りこませる。あっというまに自分のものを絡めとられ、口の中全体を掻き交ぜるように貪られながら熱い吐息を注がれ、漏れる喘ぎごと掬い取られた。
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