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第11章 (6)

 男同士の場合、抱かれる側に稀にそういうことが起こるというのはなんとなく知っていた。ヴィンセントと付き合うようになってから、自分なりに調べた中にそういった情報も見かけたからだ。だが、今回はじめて自分がなってみて、こういうものだったのだとようやく理解した。同時に、とても嬉しくなった。本当の意味で、ヴィンセントと深く繋がり合えた気がしたからだ。  ピタリと密着してはいたが、さらに身を擦り寄せて甘える。気づいたヴィンセントが、腰を引き寄せて頭に口づけを落とした。  快感が強すぎて身体はつらかったが、心は満たされていた。ヴィンセントの腕に包みこまれるのが心地いい。自分が安心できる場所は、この腕の中だと実感できた。  胸にうずめていた顔を上げた莉音は、こみあげる気持ちのままに自分から愛する人に口づけた。ヴィンセントが優しくそれに応えてくれる。啄むようなキスを繰り返しながら、誘導されるまま恋人に覆いかぶさった。  まだうまく躰に力が入らず、思うように動けない。もたついていると、気づいたヴィンセントが腰に腕をまわして自分の上に引き上げてくれた。  莉音の口づけを受け止めながら背中や臀部(でんぶ)を愛撫していたヴィンセントの手が、デリケートなあわいに辿り着いて指先を潜りこませる。 「……んっ」  莉音は息を詰め、わずかに身を硬張(こわば)らせた。だがすぐに緊張を解いて身を委ねると、ヴィンセントに跨がった状態で内壁をまさぐられながら、みずからも腰を揺らした。  先程ともに果てたはずだが、ヴィンセントの雄芯はいまだ充分な硬度を保っている。莉音は美しく引き締まった恋人の上半身に口づけを落としながら移動していくと、その胸に両手をついて身を起こした。  ヴィンセントの助けを借りて、支えてもらいながらなんとか膝立ちになる。そこにふたたび勢いを取り戻した屹立をあてがわれ、ゆっくりと腰を落としていった。 「あ……っ、……はっ、あっ……っ……!」  自分でも眉根が寄っているのがわかる。だがそれは、苦痛からくる反応ではなかった。  強い快楽の余韻がいまだ残っているため、ほんの少しの刺激さえ絶頂の瞬間に立ち返りそうになる。内壁を犯す剛直が、隔てるものなくじかに粘膜と触れ合っているのも余計に興奮を煽った。 「ああっ……あぁあ…………っ!」  根もとまでズップリと呑みこんだところで下から軽く突き上げられ、莉音は背を反り返らせた。  しっかりと腰を掴まれて前後に揺さぶられ、浮き上がった腰が落ちるタイミングで強く突き上げられる。 「やっ、あぁあぁぁぁ――っ、ふかっ……いっ」  体位が変わったことで、刺激される場所もこれまでと異なり、それが余計に強烈な悦楽を生んだ。  気持ちがいい。気持ちがいい。  離れていたあいだの寂しさを埋めるような情熱的な媾合(こうごう)に、全身が歓喜していた。  もう、自分が()っているのかどうかもわからなかった。  喘ぎながら背を(しな)らせた途端、うまく重心を保てず後方へ倒れこみそうになる。瞬時に身を起こしたヴィンセントに抱きとめられた。 「莉音……私の莉音、愛してる」  きつく抱きしめられながら耳もとで囁かれ、莉音はその胸に縋った。 「僕も好き。アルフさん、大好き!」  応えた途端、その瞳から涙が溢れ落ちる。そんな莉音をヴィンセントは愛しげに抱き竦めると、深く口づけた。  絡まり合う舌、混ざり合う吐息、互いの熱で融けそうなほど隙間なく繋がり合った結合部。  最愛の恋人から与えられる快楽に、莉音はその後もひたすら翻弄され、溺れつづけた。

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