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第1話:僕の価値

僕は、日本という国に住んでいた。住んでいた、というのはもうそこに住んでなどいないから。 これは、ちょっとした僕の話。 日本に住んでいた当時の僕は大学受験を終えた後で、あとは高校の卒業式ってくらいだった。そんな矢先だった。 目の前で子供が道路側へ転けた所に、運悪く車が突っ込んできた。僕は咄嗟に子供を庇おうと道路側へ出てしまった。僕は頭から車に強く打たれ即死だった。子供は抱き込んだ感覚があったし体の方を打ちつけた感覚はなかったから、多分無事だと思う。 僕より生きてなきゃいけないからね。 それから、何事か目が覚めた。 頭を打ったと言うより潰れたような変形したような感覚が強いけど、痛くない、どこも痛くなかった。服は血だらけだけど、体を起こして確認してみても傷はどこにもなく、あったのは目の前に居た沢山の煌びやかな服を着た大人たちだった。 何事か僕はその沢山の方達の前で倒れていたのだ。 僕と目が合うと、周りから次第に召喚に成功したとか、血だらけなのに普通にしている、とか。やはり言い伝えは本当だったのかとか、色々言っている。 誰も僕のこの状況を説明してくれる人はいなかった。 僕はその場から回収され、説明のないまま彼らは物事を進め、勝手に色々僕のことについて決めていた。ちらほら聞こえてくる話を繋ぎ合わせて考えてみると、僕を何かに使うために召喚したかのようだった。 実際、彼らが勝手に進めていった作業が取り返しのつかない段階になってやっと、あちこちで呟かれていた話の本当の意味が分かった。 僕は、この国の穢れを浄化するための「人柱」として秘密裏に召喚されたのだそうだ。 言葉の通り、生きた人間を生贄に柱とする。過去に封印されたはずの禁術だそうだ。 そんな禁術を国のお偉い方が民の苦しみを開放できる魔道具が完成したと表向きな発表をし、その原動力が古い歴史に残っていた不思議な力を持つ異世界人は浄化や癒し、その他色々祝福を下さるという文を発見したとか。 その異世界人を永遠にこの国の人柱として建てたら永遠の祝福になるのではという欲の提案により、国の裏つながりの魔導士たちを集め無事僕の召喚に成功したのだという。 そっか、僕はここでも人扱いはされないようだ。

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