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第5話

七月も半ば。高校初めての終業式が終了した。勉強を教えてもらって無事に期末テストの補修もなく夏休みを迎えられた。赤点回避のレベルではあるがそれでもちゃんと夏休みを貰えることが確定したのだ。 「春樹、今回も勉強教えてくれたお礼あっても良くね?」 「またご飯食べますか?」 「いやそれより……終業式終わったら夏休みだろ?一緒に遊びに行ったりとかさぁ 」 「あぁ……まあいいですけど 」 友達に誘われてる日を避けて伝え、「そういやお互い連絡先知らなくね?」と今まで避けていた連絡交換を行なった。 「んじゃ、遊びたい時連絡入れるわ 」 「はいはい、期待しないで待ってますね 」 手を振って別れ、ひとりで帰路に着く。きつい日差しがじりじりと肌を焦がす感覚に季節を感じながら、避暑と昼食を求めてスーパーに寄った。 + 夏休みが始まり一週間。みっっっちり宿題漬けの日々が終了した。というのも初日に片桐先輩が家に押しかけてきて『どうせ溜め込むだろ』と毎日宿題をさせられたからだ。おかげで宿題は全て終了したのだが、引き換えに知恵熱を出して貴重な夏休みが一日潰れた。 「片桐先輩、夏休みに遊ぶ人いないんですか?」 「んー、明日元カノと遊ぶ 」 「はぁ……そうですか 」 元がついても遊べるんだ……。今日も家に押しかけてきた片桐先輩にお茶を出しながら質問するとそう返ってきた。 「春樹も来る?」 「なんで?」 「人数多い方が楽しいじゃん 」 「行きませんよ。知らない人なのに。先輩の友達も、俺が来たら誰ってなるでしょ 」 「俺の友達はみんな春樹のこと知ってるから大丈夫 」 「なんで???」 本当に何故なのか。「春樹のこと話してるから」と聞こえた気がしたが……なんとなく追求はやめておいた。 「元カノさんと何するんですか?」 「何ってそりゃあ……なぁ?」 ニヤァ……と笑うその表情で、聞いたおれが馬鹿だったと悟った。そういやこの人めちゃくちゃ遊んでるって噂があった。別れてきた女の人も多いんだろうなぁ。 「性病には気を付けてくださいね 」 「わーってるわーってる 」 ぽんぽんと頭を撫でられた。五月に押し倒されてからまだ二ヶ月しか経ってないのに慣れてしまって複雑な気分だ。 「ていうかそんなのに来るかどうか聞いたんですか……」 「うん。夏は乱交しても許されんだよ 」 「なんですかその謎ルール 」 「元カノが決めた。そういや春樹って好きな子いんの?居ないなら俺とかどう?」 「ねーーわ 」 「そうだよなぁ 」 思わずした即答に片桐先輩は何がそんなに面白かったのかこちらに背を向け、腹を抱えて笑っていた。 「んじゃさ、明日来ないならキャンプ行こうぜキャンプ。いとこがグランピング施設運営してて、是非友達も連れておいでって言ってくれてさ 」 「へぇ……いいですね 」 「だろ?来週の火曜とかどうよ。空いてる?」 「空いてますよ。他にも誰か来るんですか?」 「ううん、二人きり 」 ……警戒したが「なんもしねえって!」と必死に説かれて仕方なく了承した。前にやらかしかけてるんだから警戒は仕方ないと思ってほしい。 「持ち物とかはまたメッセージ送るから。つっても向こうになんでもあるから着替えと貴重品だけで十分だけど 」 「なんて名前のところですか?」 帰ってきた返事が規模も料金も日本最大級のグランピング施設の名前で、おれは金持ちの懐の広さに恐れ慄いた。

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