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第14話
期末テスト最終日。本気で疲れた。テストまで残り一週間なんて片桐先輩の追い込みも凄まじかった。……その分勉強会が終わった後のなんだかんだ理由をつけてされたキスも長かったが。
「朝倉大丈夫?」
「疲れた…… 」
「頑張ってたもんな。最後の方とかクラス来てた片桐先輩も疲れてたし 」
「てかあの人自分の勉強大丈夫なん 」
「二学期の中間、学年15位で『えぐいくらい順位落ちたわ〜』って言ってた 」
「「えぐ……」」
声を揃えて言う二人に吹き出した。疲れて変なテンションになってるのか笑いが止まらない。話題を変えるように安達が話し始める。
「二人ともクリスマス用事ある?」
「朝倉はあるだろ。片桐先輩居るんだし 」
「空いてるけど。なんで決めんの?」
「え?でも付き合ってんじゃん 」
「……どういうこと?」
質問すると安達と神崎が顔を見合わせる。何か言おうとした瞬間先生が入ってきてその場は一旦解散になった。荷物をまとめていると「マックド行こうぜ」と誘われた。そこで会話を再開することにしたらしい。
「朝倉そういうの気にするだろうから先に言っとくけど、俺らマジで性別がどうとか気にしないから 」
ハンバーガーの包みを剥がしながら言う安達の言葉に神崎もこちらを見ながら頷く。真剣なトーンや表情から冗談半分で言ってるわけじゃないようで安心した。
「……ありがとう 」
「そんで、なんで朝倉と片桐先輩が付き合ってるかって話なんだけど……あのさ、見間違いだったらほんとごめん。朝倉、片桐先輩と、キス、してたよな……?」
「それ見ちゃって、『あ、付き合ってんのか』って俺ら思ってたんだけど……」
「…………マジで?」
ナゲットをつまみながら聞き返すと頷いた。わざわざ人通りの少ないフロアの空き教室に行ってキス……もとい駄弁ってたのに。
「あのさ、俺ら朝倉が自分から言うまで黙ってるつもりだったんだよ。絶対気にするからって。でもこのアホがテスト終わってからああ言って 」
「アホってなんだよ 」
「人のデリケートなことに口出すのがアホつってんの。そこ本当ごめんな、朝倉。んで話戻すけど……付き合ってる……んだよな?片桐先輩と 」
ナゲットを咀嚼しながらなんと言おうか迷った。肯定しても否定しても多分面倒なことになる。……それに、いつもつるんでる相手だし嘘を言ってもすぐにばれるような気がする。
「…………付き合ってない 」
飲み込み、コーラを一口だけ飲んでからそう答えると、教室で『付き合ってんだろ』と言ってきた神崎が何か大声で言おうとして、安達がそいつの口にバーガーを突っ込んで塞いだ。
「じゃああれって見間違い?」
「見間違い……でも、ない。多分嘘ついたり隠しても無駄だからちゃんと言うけど……キスはしてた 」
「付き合ってもないのにキスすんのってどうなん 」
「あんまりよろしくないよな、やっぱり 」
そう答える直前、安達は『お前もう黙っとけ』と言うように神崎の頭をはたき、ポテトを二、三本いっぺんに口に運ぶ。
「弱み握られてるとか、無理やりじゃないよな?」
「それは無い 」
「んじゃいいわ。そこずっと心配だった 」
安達はポテトを咀嚼もそこそこに飲み込み、あー、と口を開けてハンバーガーを頬張った。神崎も「安達の心配メッセージ見る?」とスマホを見せてきて、よく読んでみると返信してる神崎もこちらを気にしていたのが読み取れる。「この学校の窓、割と見えるから気いつけろよ」と忠告もしてくれた。
「てか朝倉、そういうのダメって言ってなかった?キスは例外?」
「駄目なはずだったんだけど……なんかやってみたら案外って感じ 」
「食わず嫌いだったってこと?」
「そういうわけじゃないけど……」
詳しく言いたくなくて流石に歯切れが悪くなる。困っていると察してくれたのか安達が「それよりクリスマス」と話題を変えてくれた。
「空いてんなら他の奴も誘ってカラオケ行かないかって誘おうとしてたんだけど 」
「行く行く。何時から?」
「まだ決めてない。色々決まったらクラスのグループの方でまた言うから 」
開けといてくれよと言って安達はおしゃべりを再開した。おれもそれに参加して……この日の放課後は、いつもと違う楽しさになった。
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