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第1話 ただの名前じゃなくなった
放課後の神社。
付き合い始めたけど、何かが急に変わったわけじゃない。
でも――
レンの呼び方が、ずっと頭に残ってた。
「……ねえ」
境内でほうきを持ちながら、レンが口を開いた。
「“くん”って、まだ付ける?」
「え、だって……今までそう呼んでたし」
言い訳みたいな声になって、思わず目をそらす。
そんな俺を、レンがじっと見つめた。
「じゃあさ……俺も、“悠馬”って呼んでいい?」
名前を、初めて――
恋人として呼ばれた気がして。
鼓動が、やたらとうるさくなった。
「……うん。レン」
呼び合った名前は、
もう、ただの“名前”じゃなかった。
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