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第1話 退屈と好奇心
退屈って、言葉が割りと好きだけど…
眠い。
ダルい。
毎日が、つまらない。
午後イチからの授業と放課後は、憂鬱で、もっとダルいし好きじゃない。
長引いた残暑が、感じられなくなってきた秋の入口。
日によっては過ごしやすいから。
いつもにも増して、とても眠い。
そんな時、サボりクセが付いている藍田 朝陽は、朝からクラスになんって居ませんでしたよぉ~な感じに、よく居なくなる。
誰かが気づいた頃は、もう放課後だ。
あれ?
いつの間に消えたの?
ぐらいに、思われているらしい。
同じクラスの連中は、藍田にとってどうだって良い存在で、最初から皆に合わせる気は無い。
退屈にならないようにと言う括られた付き合いだ…
それにしてもと、藍田は残念そうに頭を掻いた。
サボりに先客が、居て居眠りをしていたからだ。
気持ち良さげに…
窓際の床に座り込んで壁にもたれて寝こけてる。
藍田にとってそこは、隠れ家でもあり誰にも見つけられない場所でもあった。
「って、言うか…」
先生も、サボるんだ。
たまたまドアから見えた机の上に無造作に置かれた水色のボールペンと書類、飲み掛けのペットボトルのお茶。
誰かいるのかなぁ~と、興味本位でソッと空き教室入ると、そこに居たのは担任の土屋だった。
下の名前は、覚えてないのか出てこない。
と言うか、興味がなかった。
性格は、真面目な顔して真面目な事しか言わない大人のお手本みたいな理想像に近い先生と言う先生。
しかも面白味が無いのに一部生徒の間では、顔や容姿が格好いいと言われているみたいだ。
でも、何となく胡散臭そうで藍田は、少し苦手意識が強かった。
土屋からすれば、自分のような生意気で不真面目で救いようがないと、呆れられているんだろう考えていた。
よく睨まれてるのは、制服を着崩しているからで、なんか言いたそうだが、言ってこない姿に少し腹を立てていた。
だからか、普段の真面目くさった担任の姿からは、想像できない寝こけた姿に大声で、笑いそうになった。
「本当…こんな所で、寝てるとか、無防備過ぎ…」
土屋の足元近くで屈み顔を覗き込むと、首元に赤っぽいの痣のような…
何かの跡のようなモノを見つけた藍田は、キスマだったりして?
ちゃんと見てみたいと、好奇心に駆られると藍田は、薄い笑みを浮かべ触れるか触れないか、ギリギリに自分の指先を、土屋の緩められたネクタイとシャツから見える首の付け根に近づけ襟元をずらした。
そこまでされても、起きないとか…
もはや鈍感通り越して、バカだなぁとさえ思った。
夏の暑さの中でも、シャツの襟を緩めずにネクタイもしっかり締めてた理由は、真面目なだけではなく。
何かの跡…
ただれて見えもるし火傷かとも、思えるが、首に火傷?
思わず藍田は、身震いしてしまう。
殴れる痛みは、辛い。
責め立てられて、自分を不要扱いされるのは、もっと辛い。
恐ろしく惨めで、虚無感しか残らない。
ゾッとしながらも、まじまじと見つめ続けるのは、同情した訳では無い。
好奇心だと言い聞かせた。
首に残った大きな跡は、まるで傷跡のように大きい。
教師が、首に傷ってどういう事だ?
何してる人?
いつもこうやって、傷隠してんの?
藍田にとってやはり、土屋は胡散臭い存在だ。
おもむろに上着のポケットからスマホを取り出した藍田は、アプリ内にある無音で写真を撮れるカメラを起動させた。
どっからどう見ても、土屋と分かるアングルで、パシャリと一枚。
思わずニンマリしてしまった。
「じゃ…ねぇ~っ、先生」
藍田は、そのまま出ていったが、別に誰かに言いふらす気はなかったし土屋の傷についても、何でついてるのとは聞く気は、最初からない。
傷跡は、触れられたくない場合が多い。
見つかって騒がれて、変な言い掛かりは、聞きたくないから付ける気もない。
ただ何となく、撮ったに過ぎないだけだ。
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