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第八章(最終章)
――ゴーンッ…ゴーンッ……。
22時を示す時計塔の鐘がエテルア全体に響き渡る。
最後の花火が打ち上り終わり、街の灯りが少しずつ消え始めていく。
「星繋祭も、もう終わりか…」
「そうだな」
花火の余韻に浸るようにエイトは夜空を見上げる。
キラキラと輝く星々が眼中に入る。
そこでエイトは一つのことを思い出す。
「そういえばさ、星繋祭って花火がメインみたいになってるけど本当は〝星に願い事をする〟って言われてたよな」
「あぁ、確かに聞いたことがあるな」
「何か願い事してみる?」
互いに石垣に肘を付き、エイトはイルギスの方を伺い見る。
「君もするならね」
覗いたイルギスの表情はとても穏やかで、口端を上げてエイトに言葉を返す。
そしてエイトもそれに同意すると互いに夜空を見上げる。
星々を見て願いを込めて黙り込む。
静寂が続きエイトは願掛けが終わった合図にイルギスの手を繋ぐ。
イルギスもそれに応え手を握り返した。
そうして互いに身体が触れそうなくらい近くで並んで夜風に当たり、消えていく街の灯りをぼんやり見つめていた。
「そろそろ帰るか…」
エイトが名残惜しそうにそう告げ、彼の袖口をギュッとイルギスが掴む。
「もう少し、エイトと一緒にいたい…ダメか?」
「も、もちろんっ!」
エイトはパッとイルギスの方を向いて握られていた袖口の手を取り、両手で握りしめる。
「もう遅いから、俺ん家でいいか?」
「あぁ」
イルギスの了承を得て、少し他愛のない会話をしながらエイトの家へと向かう。
舗装された階段を降り何軒かの家を通り過ぎエイトの家へと着いた。
玄関先でエイトは鍵を回し扉を開き先にイルギスを中に招き入れる。
――バタンッ。
大きな音で扉が閉まると先に中に入っていたイルギスにエイトは後ろから首元へ抱きつく。
「どうした?エイト」
イルギスは優しい声音で抱きしめられているエイトの腕へ自身の手を重ね、彼へ尋ねる。
エイトはそのままイルギスの頬へチュッと軽くキスを落とす。
イルギスは微笑み、抱きしめられている腕を解かせ、くるりと彼の方へ向き直る。
両手の指を絡め合い恋人繋ぎになり、互いに視線を交わらせる。
「好きな相手なんて一生出来ないと思ってた…」
「私だってそうだよ。まさか人間の君を――」
限りなく顔を近づけエイトの両手がイルギスの頬を撫でる。
そのまま今度は唇に振れるだけのキスをされる。
そして丁度いい距離感まで顔を遠ざけエイトは気恥ずかしそうに口を開いた。
「――こ、今夜泊っていかないか?」
「君がいいなら…けど――泊るだけでいいのか?」
イルギスは両手をエイトの肩に置いてエイトに届く限りの耳元で誘うように囁く。
「嫌じゃなければ――その先も」
そう言いエイトはイルギスの腰にするりと手をかける。
腰から脇腹近くへ撫でるようにスライドする。
その誘惑的な手の動きにイルギスは目を細める。
「なぁ…〝アレ〟使ってもいい?」
エイトの言うアレとはきっと愛玩人形用の〝疑似精液〟のことだろう。
プロトタイプの自分なら疑似精液をセットすることは可能だ。
だがエイトからそんなお願いされるとは思わずイルギスは驚き目を見開く。
「――ここに有るのか?」
「まぁ、そりゃあ…そういうドールも来るから…」
エイトはちょっと言い難そうに、備品があると告げる。
イルギスは少し思案して彼にしぶしぶ提案する。
「…いいが、自分でセットする。君はシャワーでも浴びてきたらどうだ」
「わかった」
『準備する』と勢いよく答え、エイトは備品を探りに奥の部屋へ行く。
イルギスは少し間を置いて彼の後ろに付いていく。
ガサガサと探していたエイトだったが『あった』と呟く声が聞こえると近くの机の上にダンッと音を立てて例の物を置く。
中身の見えない円柱の瓶のような形状をした〝疑似精液〟を、そんな置き方をして大丈夫なのかとイルギスは思った。
「先に二階の部屋に行っていてくれ!」
そういうとエイトは部屋からさっさと出ていく。
焦ったように急ぐ彼を見て、少し可笑しく思ったが机の上に置かれた物に目を遣ると少々不安が込み上げてくる。
イルギスは疑似精液を持ち、言われた通りに二階のエイトの部屋へと足を進めた。
バタンッとエイトの部屋へ入る。
前に彼の祖父の部屋へ入ったときと同じ広さの部屋だが、机や棚は祖父の部屋より乱雑で机には設計書のような紙と工具がバラバラに置いてある。
イルギスはその机の上にエイトから受け取った物をコトリとそっと置く。
疑似精液をセットするためにズボンのベルトに手を掛ける。
ベルトを外しズボンの前を寛げ、ワイシャツの裾を出し下から3番目までボタンをプチプチと外す。
腹回りが露わになり、臍の下らへんに疑似精液をセットする場所がある。
そこを開くとセットするための空洞がある。
机から疑似精液の容器を手に取り、セットし開いた所を閉める。
セットを終えると乱れた服を一通り整える。
あとはエイトを待つだけなのだが、なんだか少しそわそわする。
部屋の中をキョロキョロと見渡したり、腕を組んだりその腕を組み替えたり…。
――ガチャッ。
扉の開く音が響き、音の方向へ目線を向けた。
――グイッ!
「んむ…」
シャワーを浴びおわったエイトは、戻ってくるやいなやイルギスをベッドへ押し倒し息もできないくらいの深い口づけを交わす。
「はぁ」
エイトの顔が遠ざかり唇が離れたことを知る。
エイトの髪はまだ少し濡れており、彼の双眸は獣のごとく獰猛な翡翠で満ちている。
だがイルギスはそんな彼を怖いとは思わなかった。
彼の本当の優しさを知っているから。
だから受け入れたいと思ったのだ。
「ごめん…我慢できなくて…」
「いい。気にしなくても…」
エイトは謝りつつイルギスの頬をそっと優しく愛撫する。
イルギスもその手の甲に自信の手のひらを重ねる。
「脱がせてもいい?」
「どうぞ」
顔を少し近づけイルギスに許可を求め、イルギスもそれに頷き微笑み返す。
リボンタイを丁寧に解きシュルシュルとベッドの脇に落とす。
ベストを脱がされ、ワイシャツのボタンに手を掛けプチプチと外していくと胸や腹が露になる。
上半身に着ていた服をドサリと床に落とす。
「あれ?」
「どうかしたのか?」
そこでエイトはあることに気がつく。
イルギスの首筋に手を添えて尋ねる。
「チョーカーしてないんだな」
「ん?あぁ、外してきた。ついでにピアスも」
「え、大切な人からもらったんじゃないのか?」
イルギスは左耳に指を添えエイトに良く見えるように少し右側を向き、すぐにまたエイトの顔に向き直る。
「確かに大切な人ではあるが、エイトとは意味が全然違う」
そう言われたエイトは、そんなにも特別で大切な人で自分とは次元が違うのかと落胆する。
「どうした、そんなに浮かない顔して」
「あ、いや…」
「何か勘違いしていないか?」
「え?」
イルギスはエイトの目を真っ直ぐに見つめ言葉を続ける。
「ゼノは確かに大切な人だった…だが...」
言葉を区切りイルギスはエイトの頬に手を添わせチュッと唇に触れるだけのキスをする。
「こういうことをするのは、君だけだ」
「――ぅ、んん」
あまりの嬉しさにエイトは再びイルギスを押し倒し、まるで感謝を伝えるように舌先を絡ませ深い口づけイルギスが小さな声で喘ぐ。
エイトは自身の着ていたTシャツをバサリと脱ぎ捨てる。
イルギスに下半身も脱がせていいかと尋ねると、いいよと許可が下りる。
ベルトの金具を外し下着ごとズボンをずり下げる。
イルギスの下半身を見るのはあのとき以来だ。
「本当にドールも反応するのか?」
イルギスは素直な疑問を投げ掛ける。
「使ったことないのか?」
「誰と使うと言うのだ」
イルギスはムッと反応する。
襲われたことがあると言っても2回とも擬似精液など使っていない、今回が初めてだ。
「じゃあ、反応するか試す?」
「別にいいが――」
そう言い返すとエイトは手を差し出し、こっち来てと優しく微笑む。
その手を取りクイッと引かれ、くるりと身体を反転させられボスッとエイトの胸板に背中が密着する。
イルギスの身体はエイトの両足に挟まれる形となりイルギスの薄い胸板にエイトの手のひらが重なる。
まるで大事なお人形を扱うようにしてギュッと抱き締められる。
エイトはそのままイルギスの首筋にチュッと軽くキスを落とす。
イルギスはこんな程度で反応するとでも思っているのかと内心思った。
「ん?」
イルギスの胸板を触っていたエイトの手が徐々に下に降りていく。
臍の辺りで一度止まり優しく撫でられたかと思えば、次は彼の手が左右に移動され腰に手が伸びる。
腰をやわやわと撫でられ、なんだか優しく扱われていることに胸がいっぱいになる。
多幸感に浸っていたが、撫でられていた手は再び止まる。
「?」
イルギスは動きの意図が読めずにエイトの手の動きをただ追うことしかできない。
だがその手の進む先が分かった途端、何故だか分からないが急に不思議な感情が込み上げてきて困惑し狼狽える。
「エ、エイト。ちょっと、待て!」
イルギスの制止にエイトは手をビクリとさせ動きを止める。
「…どうした?」
「あ、いや…え、えっと……」
イルギスは動きを止めているエイトの手首を今更掴む。
いま起きている、この不思議な感情が分からずに答えを求める思考回路はイルギスの声を吃らせるだけだった。
言葉が出てこずにグルグルしているイルギスにエイトは耳元で問いかける。
「恥ずかしくなっちゃった…?」
掠れた艶のある声が低く囁きかける。
イルギスはビクリとして咄嗟に左右の膝がキュッと上に持ち上がり膝頭がくっつく。
「は…はっ…」
まるで心臓が跳ねたかのように呼吸が急速に荒くなる。
エイトから力なく手を離し右手の甲で口元を隠す。
「な、んか、おかし…い…」
何もしていないはずなのに下腹部がドクドクと脈打っているような感覚に陥る。
「反応してきてるんじゃない?…ほら」
そう言ってエイトは自由になった両手でイルギスの膝頭をゆっくりと開き始める。
パカリと開かれた両足の中心はヒクヒクと反応し首が持ち上がり始めている。
「うっ…」
イルギスは恥ずかしさに顔を背け、口元に宛がわれている右手の中でフーフーと荒い呼吸を繰り返す。
「…あっ!?」
だが顔を背けている間にエイトの左手がイルギスの下半身に伸びてきていた。
反応し掛けているそれに優しく指を添えられ、それだけで甘い声が漏れた。
「ま、ま、って…!」
イルギスの制止も虚しく、やわやわと刺激されると段々にイルギスの中心は硬く芯を持ち始める。
上下に緩やかに扱かれると、先っぽの割れ目からプクリと擬似精液が漏れ出す。
「あっ、あっ…は、あ…」
イルギスは言葉を紡ぐこともできなくなり、ただ息荒く甘い声を繰り返すことしか出来ない。
擬似精液がクチュクチュと卑猥な水音を室内に響かせる。
その音はどんどん速度を増し、グチュグチュと大きい音へと変化する。
「や、あ…!」
エイトは空いていた右手で割れ目をカリカリと刺激する。
強くなる刺激に堪えきれず、漏れ出る声が大きくなる。
「ほら、いいよ。イッても」
「は、ぁ…ま――ダ、メ……イッ――」
左手の激しく上下する動きに合わせるようにビクビクを大きく痙攣し、そのまま勢い良く射精しエイトの左手を白濁で汚した。
イルギスはハァハァと胸を大きく上下させ荒い呼吸を繰り返す。
(ヤッバ、超エロい――)
ビクビクと震えるイルギスを抱きかかえながら、エイトは自身の手で追い詰められ果てたイルギスに興奮を覚えた。
「エ、エイト……君――」
あたっている、と指摘され若干の恥ずかしさに言葉が一瞬出てこなかったその隙に、イルギスは首だけを少しエイトに向け問いかける。
「こんな私に勃つのか…?」
その言葉はまるでドールである自身を卑下しているかのような問いかけだった。
「当たり前だろ。イルギス自体が好きなんだから」
「――ん」
そう言ってイルギスの顎を掬い上げ、その唇に深く口づける。
チュッチュッ、クチュクチュと口腔を舌先で掻き回し、舌と舌を絡め合いその舌をヂュッと吸い上げる。
その刺激に驚いたイルギスは肩をビクリと跳ねさせる。
キスしている間にエイトは抱きかかえていたイルギスをゆっくりと引き寄せ自身と向き合う形でペタリとシーツの上に座らせる。
「?」
唇が離れていき、いつの間にか向き合って座っていることにイルギスは一瞬気が付けずに首を傾げていた。
その間にエイトは自身の中心を圧迫していた下半身に纏っているものを全て脱ぎ捨てた。
「――ぅ、わ」
イルギスは目の前で主張するエイトの大きいソレを見て、なんとも言えない声が零れる。
大きく反り勃つ屹立に、ゴクリと喉を鳴らす。
「イルギス、ちょっとおいで」
「…?」
急に両手を差し伸べられ、分からずに自身の手のひらを重ねる。
フワッと身体が浮いてエイトの腿の上に軽く座らされ、上半身は彼の厚い胸板にピタリと
くっ付けられる。
「ドールでも慣らしたほうがいいだろ?」
「そうなのか?」
だが痛みなど感じるような身体ではないからそんなの関係がないのではないかとイルギスは思った。
「人間と同じで無理矢理ヤると、壊れるから」
「……今までは運が良かったのか…」
イルギスは今更になって自分が運よく助かっていたのだと知る。
「だから、こうやって指で…」
そう言いながらエイトはベッドサイドの引き出しからローションを取り出し自身の手に垂らす。
その指を躊躇いもなくイルギスの秘部に宛がい、そのままゆっくりと中に侵入させる。
「――ぅ」
「ごめん、嫌だったよな…?」
「だ、大丈夫だ。ちょっとビックリしただけで…」
続けてくれ、と言われエイトはそれに従いズブズブと人差し指をゆっくりと出し入れする。
まるで粘膜のような質感が纏わり付き、その感覚が指先に伝わる。
たとえ作られた粘膜質な内側であろうと、潤滑剤と混ざりあう卑猥な音色が耳に届き興奮が爆発しそうになる。
「は、はっ」
されるがままのイルギスはエイトの首に腕を回し、浅い呼吸を繰り返す。
弱い快感だが、イルギスの中心は再び硬く勃ち上がり始める。
「――イルギス」
「?……んむっ!」
名前を呼ぶと、固く閉じていた瞼が薄く開かれ桃色の双眸は涙で滲み潤んでいた。
こちらの呼び掛けに気が付いたのを確認し、間を置かず薄く開かれた唇に吸い付いた。
イルギスはビクビクと腰を跳ねさせ、後孔に出入りしている指をキューッと締め付ける。
「キス、気持ちいね?」
「――ん」
エイトの囁きにイルギスはうっとりと短く肯定する。
イルギスの口端からどちらのものか分からない唾液が零れ顎を伝う。
「あ、ぁ――」
再び動き出した指はいつの間にか増やされ、ゆるゆると3本の指がスムーズに出入りするようになっていた。
「良さそうだね」
「――ん」
エイトが指を後孔から引きずり出す。
ズルッとした引き抜かれる感覚にイルギスは声を漏らしてしまう。
イルギスがぼんやりとエイトの首もとにしがみついていると、その腕を取られゆっくりとベッドに押し倒される。
ちょっと待ってね、と言うとベッドサイドから避妊具を取り出し装着する。
イルギスは、機械人形相手でも配慮してくれたのが内心嬉しかった。
「もし、嫌だったら言って」
コクコクと頷き、ベッドのシーツをギュッと握り込む。
イルギスの膝裏に手を差し込みぐっと左右に開き胸の辺りまで持ち上げる。
腰が少し浮き、晒された後孔は待ちわびているようにヒクヒクと収縮を繰り返す。
そこにエイトの硬く反り勃つ大きいソレをグググッとゆっくり中に突き立てる。
イルギスは短く呼吸をし圧迫感に身を強張らせる。
ある程度奥まで入ったが、流石に全部は入れていないようだ。
動くよ、と小さく告げられイルギスもそれに同意する。
今度はイルギスの腰を掴み直し、入れていたものを抜けない程度にギリギリまで引いていく。
またグーッと奥まで、そんなゆっくりとした抽挿を続けていくうちに段々にそのスピードも増していく。
「ん、ん…ぅあ、あっ、あ…」
イルギスは律動に合わせて艶を帯びた矯声を上げる。
突き上げる力も増していきズブッズブッと音が聞こえそうな程深く内側を抉られる。
「は、は――ひぁっ!?」
奥に入れられたその瞬間、今までとは全く違うゴリッとした衝撃に思わず大きな声が出てしまう。
あまりの衝撃と快感にビュッビュッと白濁を漏らしてしまい、後がキューッと収縮しエイトのモノを締め付けてしまう。
「はぁ、あ……」
何が起きたのか分からないといった表情で呆然とエイトを見上げた。
彼も彼で機械人形に、そういう気持ちが良い場所が付いていたことに驚く。
そうと分かればエイトのする事は一つだった。
「――いっ、ちょ、ちょっと…ま、待って…!ひぁッ!?」
エイトはイルギスの制止も聞かずに、気持ち良い場所を執拗に攻め立てる。
イルギスは初めて与えられる快感に、溺れている自分が怖かった。
「え、えいとぉ……ん、んんっ、こ、こわい…」
「こわい?……どうして?」
「…んん、こん、な……気持ちいいの、は、初めて、で」
エイトは腰の動きを止めて尋ねると、エイトにとってその返答はただ彼を喜ばせるだけだった。
エイトはシーツの上で力無く投げ出されたイルギスの左手を自身の右手で絡めとる。
指と指をスルリと絡ませ、所謂恋人繋ぎ状態。
「こわいなら、手繋いでてあげる。大丈夫、一緒に気持ち良くなろう?」
「――ぅ、うん」
イルギスが小さく頷くのを合図に、エイトは律動を再開する。
「あ…あ……っん、あぁ、んんっ」
気持ちいい所に何度も当たり、堪えるような声でリズミカルに喘ぐ。
先程達したにも関わらずイルギスの擬似性器は反り勃ち、蜜をツゥーと垂らして最高の瞬間を待っているようだ。
「あ…――あぁっ!……んっ、ん――」
エイトはイルギスの腰を引き寄せ、勢いを付けてズンッと奥へ挿入する。
その衝撃に喘ぐがエイトによってその口が塞がれる。
ちゅっちゅっと優しく啄むようにキスをしたかと思えば、唇を舌で割り開き舌先が中に侵入してくる。
歯列を舐め上げ、薄く開いた隙間からイルギスの舌を絡めとる。
先程の反応を見るにイルギスはキスが気に入ったようだとエイトは推察したが、それは正しかったようだ。
イルギスも拙いなりにも積極的に舌先を絡ませてきた。
(うわ……か、かわいい…!)
エイトはキスで声が出せないが心の中で悶絶する。
だが急にイルギスの眉間に皺が寄り、エイトの肩を押し返し、互いの唇から銀の糸が弧を描きプツリと切れる。
「……え、エイト……何で急に…お、大きく…?」
「あ、あはは~……」
イルギスは自分の中に入るエイトのソレが前触れもなく自身の中で大きくなり吃驚してエイトを引き剥がしてしまった。
そんなエイトも誤魔化すように乾いた笑いを溢す。
「んん、す、少し……く、苦しい……」
イルギスがそう言うと自身の臍の下を手で擦り、呻く。
「俺も…あんまり締め付けられると、かなり…キツイ…」
「なッ――!?」
イルギスは無意識だったがギュウギュウと中のモノを締め付けていたようで、意識すると締め付けている感覚が自分に伝わり、まるで自分がエイトを無意識に求めていたようでだんだん頬が上気し顔全体が朱く染め上がっていく。
「キツイから、そろそろラストスパート――」
そう言うとエイトは再び動き出す。
イルギスの膝裏を掴み、グッと持ち上げ腰を浮かせる。
自重により更に奥まで入りやすくなる。
「アッ、アッ…あ、ま、ッア!」
矯声が大きくなりあまりの快感に、淫らに泣き叫ぶことしかできなくなる。
イルギスの眼鏡の奥の眦から涙がポロポロ零れ落ちる。
肌と肌がぶつかり合う音と接合部から鳴る水音が室内に響き渡る。
「や、アッ、ダ…ダメ!――も、もう……!」
「お、れも…!」
抉るように何度も何度もイルギスの気持ちいい場所を攻め立て、互いに快感が登り詰めていく。
「アッ、アッ…アァッ――い、イク……!――あ、アァァ――ッ!」
「――ック!」
絶頂に登り詰めたイルギスは、ビクビクと腰が跳ねビュルッビュッビュッ、と何度か白濁を勢い良く吐き出す。
イルギスが達した瞬間ギューッとエイトのモノをきつく締め上げ、彼も眉間に皺を寄せ絶頂する。
全ての精液を出しきり、持ち上げていたイルギスの身体を戻し、自身をズルリと引き抜き避妊具を外し口を結んでゴミ箱に捨てる。
「――ん、んん」
イルギスはぐったりとベッドから動けずに身を投げ出している。
「イルギス、大丈夫そう?」
「う、ん……」
様子を確認したエイトは、クローゼットの引き出しからふかふかのタオルを取り出し戻ってくる。
汚れてしまった顔や身体をテキパキと拭いてくれ、いつの間にか拾ってきたイルギスの下着を履かせてくれた。
その優しい手付きにうっとりとする。
エイト自身も適当に身体を拭き、投げ捨てていた下着を履く。
若干汚いベッドに気にせずエイトはイルギスの横に窮屈そうに横になる。
「エイト、眠いのか?」
寝転がった瞬間に欠伸をしたエイトにそう尋ねる。
「――あぁ、イルギス…一緒に寝よう?」
「ふふ、あぁ。いいよ」
軽くイルギスは微笑み、エイトに抱き付かれる。
「ひんやりしてて気持ちいいな……」
抱き締められて、エイトの腕や胸板、脚などが接触する。
いつの間にか、規則正しい寝息が聞こえてきてイルギスはエイトの頬に軽く手のひらを添え囁いた。
「――おやすみ、エイト」
――ゴーン、ゴーン、ゴーン。
大きな針が動き、定刻を伝える鐘の音が帝都全体に響き渡る。
「ん、んんーー?」
歯車と歯車の狭い隙間を赤毛の機械人形、エデルは縫うようにじりじりと注意深く何かを探していた。
探していくと少し奥の方にキラリと小さな光が一瞬輝いたのが見えた。
「あった!レムさーんっ!ありましたよーっ!」
大きく叫ぶと歯車の間から出てきたエデルがブンブン腕を振り回しながら、名前を呼んだ相手の近くに駆け寄る。
名前の主、レムも別の場所で同じものを探していた。
「エデル、よくやった!」
近づいてきたエデルの手の中を確認すると、それは鉛色のネジ。
ここの時計塔は最近、謎の異音に苛まれていた。
その原因がこのネジだ。
歯車のネジがいつの間にか一本抜けており、そのせいでたまにガタガタと音を鳴らしていたのだ。
レムはネジを締め直し、今現在まで鳴っていた異音が無くなり安心する。
「いやー、これでやっと元通りになったぜ」
外が見える大きな窓に近づいていき、キラキラ輝く青空を見渡す。
星繋祭も無事終わり街全体は後片付けに追われ、騒がしくしている。
そんな人々を呑気に時計塔の最上階の大きな窓から眺めていた。
「どうかしたんですか?レムさん」
ヒョコッと後ろから身を乗り出したエデルは、レムと同じように窓の外を見下ろす。
「ん?……今年の星繋祭も無事に終わったなぁ…って」
「今年の花火も凄くキレイでしたね!」
エデルは興奮気味にレムの顔を見遣る。
「そうだ、エデル。そろそろ本格的に暑くなってくるから、花を室内に移し替えないと」
「はーい!」
元気に返事をすると、揃って昇降機で1階へと降りる。
外にはレムが趣味で育てている花が数種類鉢植えに植わっている。
花が咲いているものやまだ蕾の状態のものまで。
何個か鉢植えを慎重に移動していると、エデルは気になる花を見つける。
「レムさん、この花なんですか?お星さまみたいな形ですね!」
「ん?……それは――」
一つの鉢植えを室内に置いて戻ってきたレムはその鮮やかなピンク色の花弁を見て顎に手を添える。
「可愛い花だろ?…クロウエアっていうんだ」
「面白い形ですね!」
「それも室内に移動するから持ってきてくれ」
はい、と返事をして大事そうに両手で抱えて運んでくれた。
「星形と言えば――」
エデルは星形の花弁をツンとつついてレムに問いかける。
「レムさんは星繋祭の願い事しましたか?」
「ん?…願い事か、そういうエデルは何かしたのか?」
レムもクロウエアを眺めたままエデルに問い返す。
「僕ですか?僕は、“早く仕事を覚えたいです”って!」
「はは、エデルらしいな……俺は――」
眺めていた鉢植えの星から視線を外し、窓の方へ歩いて外を眺め、くるりとエデルに向き直り言葉を続けた。
「――来年も花火を見れますように…!」
レムは満面の笑みで、照れたように答えたのだった。
END
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