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第100話 ふたりだけの夜 ※
熱を確かめるように、ゆっくりと、けれど深く動きが始まった。
擦れるたびに、エルの身体が甘く震える。
「んっ……は、ぁ……っ、アザール……っ」
内側を押し広げられ、敏感な場所をなぞるような動きに、理性がどんどん溶かされていく。
エルの体は自然と逃げるように上にずれて、それを許さないとでもいうかのように、アザールの手が腰を掴む。
「ぁ、あっ、あ……きもち、い……っ」
閉ざされた奥に先端が当たり、その度に頭の中がビリビリと痺れるような感覚が走る。
快楽で蕩けてしまいそう。気持ちよくてたまらない。
何度目かのそれに絶頂を迎えたエルは、荒い呼吸を繰り返しながら、まだ体に走る余韻に目を閉じた。
そんな時、アザールがぐっと深く腰を沈めた。
ノットが僅かに入りかけ──エルが目を見開く。
「っ、それ……っ、あ……!」
「……ノットだ。大丈夫。ゆっくり、するから」
アザールの声は掠れていた。
それほどに、ずっと我慢してきたのだ。
番と深く結ばれる感覚を、どれほど求めていたか。
「少し……力を抜いて。……奥まで、繋がりたいんだ」
「う゛、ぁ、あぁっ!」
ゆっくりと──何度も角度を変えながら──アザールは根元の膨らみを押し込んでいく。
エルの身体が受け入れた瞬間、ぬるりとノットがすっぽりと収まり、奥でぴたりと繋がった。
「っ、あ゛……はぁ……っ」
奥の壁を越えて、その先まで入った大きな質量に、エルは続けて絶頂する。
爪先がピンと伸び、アザールを強く締め付ける。
ドクドクと、中に熱いそれが注がれた。
「ぁ、あつ、いぃ……ッ」
「……っ」
ふたりの身体が、離れられなくなる。
獣人であるアザールにとって、これは何よりも深い絆の証だった。
ノットで結ばれている間は、どれだけ抱きしめても、もう足りないほどに愛おしい。
「エル、苦しくないかっ?」
「あぅ……ぁ、だ、だいじょ、ぶ……」
「よかった。……また、こんなふうに、お前とまた繋がれたことが嬉しい」
アザールはそう言えと、エルにキスの雨を降らせる。
顔を真っ赤にして、舌を絡め受け入れるエルの姿は、胸が痛くなるくらいに愛らしい。
エルの手がアザールの背中に回される。
「……僕も、嬉しい。……ずっと、またこうして欲しかった……」
動けないまま、ぴたりと密着して、時間がゆっくり流れる。
互いの心臓の鼓動が聞こえる距離で、何度もキスを交わした。
エルの奥に、アザールの熱が溢れる。
流れ込むそれすらも、今は心地よい。
ノットがそれを留め、ふたりの身体をしっかりと繋ぎとめる。
「……フェンとリュカが、生まれてきてくれて、本当に良かった」
「でも、俺の一番はお前だ。……それだけは、忘れるなよ」
その言葉に、エルは目を潤ませて、そっと微笑んだ。
──こんなにも、愛されている。
身体だけじゃない。心も全部、受け止めてくれている。
ひさしぶりの、ふたりだけの夜。
そっと、深く結ばれたまま──優しく寄り添い、長い時間を過ごしていくのだった。
【ふたりだけの夜】 完
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