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【第1部】第1章 1.日常

いつも、同じ夢を見る。 あの時、俺があの選択をしなければ。 あの時、俺があの場所にいなければ。 『星七』 振り返った親友が、俺の名前を笑って呼んだ。 だが、こちらへ近づくその瞬間、焦りが喉を突き破り、俺は叫んでいた。 『来るな、…こっちに来るなっ!』 ――アキ……! 強い光の中で、驚いた顔だけが焼き付いて消える。 あの時、彼が言おうとした言葉は―― …一体、何だったのだろう。 「星七(セナ)」 名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねた。 浅い呼吸のまま、俺は周囲を見渡す。 ここは、大学の講義室だ。 「まずい…試験近いのに、ぼーっとしてた」 「今回はさすがに学年2位かもな。優等生もそろそろ幕引きか?」 友人の藍沢(アイザワ)は、からかうような口調で言う。 俺たちは肩を並べて講義室を出た。

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