1 / 9

1.攻め視点

PCの明かりが頼りの薄暗い部屋。 その前に座っている男は前を寛げさせ、何やらぶつぶつと言っている。 手に持っていたハンカチを肺いっぱいに吸い、左手で懸命に扱いていた。 「好き、好き好き⋯⋯初田君⋯⋯はぁ⋯⋯可愛い⋯⋯」 興奮と幸福で満ちている男は小さく呻いた。 左手に包まれていたそこから吐き出され、その一滴がPCの画面に飛び散った。 「はぁ⋯⋯あまりにも可愛くて、僕、射精しちゃったよ⋯⋯」 さらに頬を緩め、遠くから撮影した"初田"と呼ぶ男子を見つめていた。 画面に付着したものが、まるでその男子に顔射したように見えた時、興奮を感じた。 が、しかし。 「拾ったハンカチで毎日シていたら、初田君の匂いがなくなっちゃった⋯⋯」 写真でもできなくはないが、あの時のときめきを思い出しながら、初田君だと分かる匂いを嗅ぎながらシたい。 また本人の物を拾ってするべきか。いや、早々落とすことはないだろうし、接する機会なんてもってのほか。 どうすべきか。 「いや」 男はあることを思いついた。 「だったらいっそのこと、本人の匂いを嗅げばいいんだ」 口にしたらいけるような気がした。 絶対にいける。 そうだとしたら、実行しないと。 「待っててね、初田君」 笑いかける初田の横顔にほくそ笑んだ。

ともだちにシェアしよう!