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第17話 ピシャランテ騎士団寮
騎士団寮の生活が忙しく、ハイリは3年間屋敷に戻ることはなかった。ぼくは使用人として働きながら、同じく使用人である元騎士のツィンバルトに剣術を習う日々を送っていた。もともと体のよく動く方だったぼくは飲み込みが早いと褒められ、着実に剣術を覚えていった。
そして、いよいよぼくが騎士団寮に入学する日。奥様のご好意で騎士になるための学費や諸費用はすべてスウェロニア家が出してくれることとなった。ぼくはその期待に応えるべく、心身を鍛え上げていた。
その頃ぼくは13歳となり、スウェロニア家に仕えて4年目になっていた。ハイリは16歳となりスウェロニア家随一の騎士として名高く、優秀な成績をおさめていると奥様から聞いていた。
「奥様、では行ってまいります」
「オズ。体を大切にね。それとーー」
「わかっております。にいさま……ハイリの様子がわかったらすぐに報告いたします」
「ありがとう」
柔和な笑みを頬にたたえて、ぼくは奥様と最後の別れの合図をした。奥様の前に跪き、その手を頂戴して接吻するというものだった。何度もやってきたそれは、ぼくを使用人であることを重々己に承知させるものだった。
騎士団寮までは、騎士団が迎えをよこしてくれる。庭先に停まった馬車にぼくは乗り込んだ。杉でできたというそれは、中にほんのりと湿気の匂いを含んでいた。そしてわずかに感じる厳しい空気がぼくを覆った。
「オズワルド。数日の道程だ。今のうちにゆっくり休むといい。寮に着いてからではもう休む暇もないぞ」
出迎えに来てくれた寮官の1人が重々しく口を開いた。この仕事を何度も請け負ってきたのだろうその人は、厳しい目つきをしていたがその瞳はまだ子どもを見守る親の影が残っているように見えた。
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