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第18話

 ハイリのいる騎士団寮は、この国の国王一家を守るための盾の役割と、王家に逆らう賊を殲滅せんとする剣の役割を担う若人たちが通う学校だった。  その学校の名前はピシャランテ騎士団寮。13歳から20歳までの少年を一人前の騎士にさせるための学校だった。  この学校には3つの寮があり、家柄や身分で分けられていた。  ハイリの入ったデューフィーと呼ばれる寮は、黒影騎士団とも異名がつく名門貴族の少年のみが入寮を許可される寮だった。寮を表す旗には勇猛な獅子の姿が描かれている。  一方でぼくの入る寮はシャルメーニュと呼ばれる寮だった。ここは名門貴族ではない一般市民の出の少年が通うことになる寮だった。ぼくはスウェロニア家の一族になったとはいえ使用人の身なので、デューフィーではなくシャルメーニュに入ることに決まった。旗には知恵の力を表す梟が描かれていた。  この2つのどちらにも属さない際立つ寮が一つだけある。カロスと呼ばれる寮だった。そこはテバ教の十字架を描いた旗を持っていた。テバ教とは、この国「パルーア」を生み出したと伝え継がれる神話を信じ布教するものたちの属する宗教のことだ。パルーアとは海側の地域では真珠を意味する言葉である。  神父や宣教師の子どもが騎士となるべく通う珍しい寮だった。事実、カロスに暮らす寮生はデューフィーとシャルメーニュを合わせた寮生の5分の1の人数しかいなかった。  この3つの寮で最も多い寮生を抱えるのはデューフィーだった。次いでシャルメーニュ、カロスという順だった。

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