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第20話

「この話を聞くと普通は困った顔をする新入生が多いんだが、君は許容する力が秀でているみたいだ。期待しているよオズワルド」  2階の廊下を進んだ先のドアの前でエリオ寮長が足を止めた。錆びたドアノブを手前に引いて、ぼくに入るように促す。ぼくはおずおずとこれから寝泊まりをする部屋に足を踏み入れた。 「先に来た同居人は外に出ているらしいな。後でお互い挨拶をすませるように」  そう言うと「また他の者の案内をしなければならないから」とエリオ寮長は早足で1階に降りていった。   「来ないな……」  夕食を済ませた後も同室の人物は姿を見せなかった。新入生同士仲良くしたかったのに。そんなふうにしょんぼりと肩を落としていると、勢いよく玄関のドアが開いた。 「う、わっ」  そこには巨人のように背の高い熊のような体つきをした男がいた。重量感のある音を立てながら足をドンドンと踏み鳴らして部屋に入ってきた。そして、2段ベッドと小さな机と椅子が壁にくっついて並ぶ以外には何もない狭い部屋の中でぼくの姿を見つけた。 「……なんだおまえは」  低い声で訝しむように眉をひそめる大男に気をとられ、ぼくは何も言えずにいた。すると、男は再度大きな声で聞いた。廊下にも響きわたるほどの大声で。 「なんだおまえは!」  あまりの剣幕にビクッと身体が跳ね上がる。しかしここで弱みを見せたら舐められる。それだけは避けたい。ぼくは「こっちの台詞だ!」と思いながら、その声に負けないように声を張り上げて名前を言った。 「ぼくはオズワルド。今日から相部屋なんだ。よろしくお願いします!」

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