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第22話 シャルメーニュの瞳

 囀る鳥の声を聞くのと同時に目が覚めた。ぱしぱしと瞳を瞬かせて1段目のベッドを覗くと、手足をベッドからはみ出させたウルクの寝姿があった。この大男には幾分かせまい寝床のようだ。  ぼくは極力音を立てないようにベッドの2段目につながるはしごを降りた。そして、昨日エリオ寮長から手渡された寮館の地図を片手にささやかな朝の散歩に向かった。  まだ皆寝静まっているのか、何十もの部屋を有する廊下はしぃんと静まりかえっている。寮生を起こさないように廊下を進み、シャルメーニュの象徴である梟の形をした像がある広間に出た。ここでは朝の朝礼や正典に使用されることがある円形の広間だった。およそ500人いるシャルメーニュの寮生をややゆとりを持って収容できるような設計になっていた。エメラルドやルビーの宝飾の施された壁を見ながら玄関口に足を運ぶ。  途中通りがかった食堂からは、香辛料の匂いが漂ってきてお腹がくうっと鳴った。ピシャランテ騎士団寮では朝昼晩の食事が食堂で用意されており、好きなメニューを選んで食べることができる。寮生たちへ栄養満点の食事を提供してくれるときいているので、朝ごはんが楽しみになる。 「えっと、たしかこの辺に……」  木造組みの扉に手をかけるが押せども押せども全く開くような気配は見せない。鍵がかかっているのかもしれないと思ったぼくは諦めようと肩を落としたそのときーー。  ギギッと重々しい音を立てて扉が内側から開いた。そして扉の隙間から美貌の青年が顔をのぞかせたのである。

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