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第23話
「ひゃっ!」
不意打ちの面会に心の底から戸惑いの声が漏れてしまった。慌てて口を塞ぐが、半身を扉から見せた青年は女狐のように妖艶な瞳に山を描いて笑った。
「驚かせてしまったね。ふふ」
頭の後ろで髪をお団子にした青年が楽しそうに微笑む。
「いえっ、ぼくのほうこそすみません。この扉の勝手がわからず……」
「悪かったね。どうせこの時間はいつもぼく1人だから、扉に背を預けて読書に集中してしまっていた」
「集中されているところすみませんでした」
すると青年は眉をひょいと上げてみせた。
「地図を持っているね……新しい梟の仔かな?」
「梟の仔?」
聞き覚えのない言葉に首を傾げると、青年は「ごめんね」と肩をすくめた。
「ぼくたちの間では新入生のことをそう呼ぶんだ。シャルメーニュのモチーフは梟だろう? 梟の子どもだから、梟の仔って」
青年は本を小脇に抱えるとぼくを誘うように部屋の中に招き入れた。
「さぁ、お入り。ここがシャルメーニュの瞳の間さ」
扉の奥には本の山があった。書架に置いてあるものもあれば、乱雑に机の上に置かれたものもある。こんなに大量の本を見るのはぼくは初めてだった。ハイリの屋敷の図書館よりも大きいに違いない。だからぼくは呆気に取られて口を開けたまま塞げないでいた。
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