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第24話
「ふふ。雛鳥がご飯をねだってるみたいだね」
開けた口をからかわれ、ぼくは恥ずかしくなって急いで両手を使って口を塞いだ。
「冗談さ。君、名前は?」
「オズワルドといいます。あなたは?」
「レフ」
レフさんがおもむろに後ろでとめていたお団子を崩した。はらり、と白い髪が背中へ流れる。白いおこじょのような髪は背中につくほど長い。菫色の瞳がらんらんと光る。ぼくは女性のように美しい容貌のレフさんに目を奪われていて、返事がひとつ遅れた。
「レフさん、ですね」
「うん。ここの間の管理人をしている。ちなみに歳は18だから、君よりかなりおじさんかな」
「そんなことないです! 立派な先輩です」
ずいっと身を乗り出してそう言うと、どーどーっと暴れる馬を諌めるように手を出してきた。
レフさんはその後この部屋の案内をしてくれた。そしてそのときに聞いた話でぼくが感銘を受けたのはーー。
「どうしてこの部屋はシャルメーニュの瞳の間と呼ばれているんですか?」
「お、良い視点だ。ぼくも初めてこの部屋に来たときに当時の管理人に同じことを聞いたよ。じゃあさっそく君の質問に答えるとするよ」
レフさんにあれを見て、と部屋の中央の壁にある柱時計の上に飾られた翡翠色の宝飾を示される。
「あれは梟の瞳を表しているんだ。古代から梟は知恵の神様として祀られることが多かった。そしてこの部屋は知恵そのものを有している部屋だ。あれは市民出身の少年たちからなるシャルメーニュをこのピシャランテ騎士団寮に組み込んだ当時の寮長が込めた想いなんだよ」
「想い?」
「そう。貴族の血を引くでもなく、テバの御名に跪くこともない一般市民の我々が彼らと対等に渡り合い騎士として栄光を掴むには、知恵の力が必要不可欠なのだと、そう教えているんだよ」
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