26 / 80

第26話 練武

 ピシャランテ騎士団寮に入寮して3ヶ月が経った頃。同室のウルクとも一定の距離感をとって争いなく平穏に暮らしていたぼくは、ある日唐突な衝撃に見舞われることになる。 「今日の練武はデューフィーの寮と合同で行うこととなった。全員甲冑に着替えてデューフィーの大円庭に集まるように。解散!」  先生の一言で素早く寮生が動き出す。ぼくもそれに遅れまいと、3ヶ月経っても慣れない甲冑に身を包みデューフィーの寮の外れに位置する大円庭に向かった。  大円庭は中心に丸い円ができた広場があり、そこを囲むように花崗石の階段が折り重なっている。ぼくは内心胸を躍らせて練武に励んだ。この寮のどこかにハイリがいる。運が良ければ今日にも再会できるかもしれない。そう思うと槍を持つ手に力が入るのだった。 「っはぁ」  同じ3ヶ月という期間だというのに、名門貴族の少年を抱えるデューフィーの寮生は激しい練武に息をあげることもない。今もこうして倒れそうになっているのはシャルメーニュの大半の寮生だけだ。そして残念ながらぼくもその1人として、息を荒げて地面に倒れているのだった。  シャルメーニュの練武は離脱した者に罰が与えられ、その場でうさぎ跳びをさせられたり、全速力で大円庭の背の高い階段を昇降させられたりした。ぼくも息絶え絶えに必死で食らい付いていったが、意識も朦朧とし始め口から胃液が込み上げてきそうになっていた。

ともだちにシェアしよう!