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第58話 sideレフ

「ハイリ」  オズが帰った後、気まずくなったのかイルファも席を立ち邸宅から出ていった。残ったのは2人、ぼくとハイリだけ。 「なぜあんなつっけんどんな対応をするんだ。元はといえば、ハイリがオズに会いたがっていたじゃないか。ぼくとハイリの仲を聞きつけてアフタヌーンティーにまで呼んだりして……ぼくには君の意図がよくわからないよ」  ハイリが両手を膝の上で組んで呟いた。 「好きでこうしているわけじゃない……ただ今は、これくらいの距離でなければ困る」  珍しく気落ちした彼の声に違和感を覚えた。 「……まだ泣き顔しか見ていない」  ハイリの自嘲的な笑みとともにこぼれた言葉を、ぼくは受け取るのに困っていた。あのハイリがどこか懐かしそうな目をして遠くを見つめている。 「引き続きあいつを頼むぞ、レフ」 「2人の間に何があったのかは知らない。けど覚えておいてくれ。ぼくは欲深い。欲しいものは必ず手に入れる」  踵を返して外に向かう途中、ハイリの掠れた笑い声が耳に残って離れない。 「俺はおまえよりも強欲で強情だ」  邸宅に残る後ろ姿のハイリにはいつもの威厳はなく、ただくたびれた長靴のようだった。  それほどまでに獅子狩りで疲労したのか、あるいはオズのことが気になって仕方がないのか。  いずれにしてもオズはぼくが守ってみせる。どんな奴からも、絶対に。

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