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第57話

「待て」  熱い塊がぼくの手首を掴む。それは懐かしい感覚で、ぼくは無意識にまた涙を溢れさせていた。  ハイリはぼくの腕を掴むと大きなため息をついた。 「騎士なら簡単に泣き顔を見せるな」 「ごめんなさい……っ」  そしてぼくを掴む手を緩めて離した。 「今日は早く帰って休め」 「……はい」  ぼくはその場を後にした。イルファとレフさんにお礼を伝えると玄関まで送ってくれた。そのあと1人とぼとぼと自室に戻った。  だから知らなかった。ぼくがいなくなった後で、レフさんとハイリが交わした会話がどんなものだったのかを。

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