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第60話
今日の講義は特別講義で、ぼくはデューフィーの寮長であるハイリが受け持つクラスになった。
なぜかというと、来月行われる剣舞大会の説明会が行われるからだった。ぼくは20メートルほど離れた壇上で説明をするハイリを見つつ、必死に説明されたことをノートに書き記していた。ハイリは緊張した様子はなく、そして普段通りぼくのことを気にするでもなく講義をしていた。
説明会が終わったあとで、昼食をとるため講義室を出ようとしたところでレフさんに声をかけられた。
「オズ。急で悪いんだけど午後の講義が終わったらぼくとお茶しないか? 王室御用達のフロマージュが実家から送られてきて、1人では食べきれないんだ」
フロマージュ。昼食を前にしたぼくのお腹がぐうっと鳴った。シャルメーニュの寮の食事は栄養価は高いが質素なものばかりで、甘いものなどほとんどない。出たとしても果実程度だ。甘いものを食べるのはピシャランテ騎士団寮に入寮してから初めてだった。
だからぼくは笑顔になってレフさんに答えた。
「もちろんっ」
「よかった。じゃあ、講義が終わったら迎えにいくよ。講義室はB室だったよね?」
「はい。ありがとうございます」
午後の講義が終わるとすぐ、ぼくはレフさんの姿を探したがその手間も省けた。講義室の外に出ると廊下に集まる寮生が何やらひそひそと噂しているのだ。
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