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第71話
「オズ。負けるな!」
会場の方からイルファ先輩の声援が聞こえてくる。ぼくも攻撃の型に入りたいところだが、次々襲ってくるジルバートの剣撃を避けたり、守るので精一杯だ。
「っく」
地面を強く蹴り、1度ジルバートの視界から消える。ジルバートが体勢を整える前に、攻撃型の龍の型を構える。右手を相手に突き刺すように向け、左手を天に向けて伸ばす姿勢だ。
ふぅぅっと深く息を吸い、呼吸を整える。龍の型は一点集中型だ。外せば相手に大きな隙を見せることになる。まさに一撃必殺の舞なのだ。
客席から歓声が消えた。ぼくはジルバートの長い手足から放たれる鞭のような剣撃をすり抜けて、相手の懐に深く入った。
とった!
そう思って、勢いよく突き刺そうとしたときジルバートは奇怪な動きを見せた。
「!?」
ぼくの方を見向きもせず客席に走り出す。
そんな、白線から出たら退場になってしまうのになぜ? ジルバートが突進する方向を見るとぼくの体は咄嗟に動いていた。
「ハイリっ」
ジルバートが先程まで持っていた木刀の切先を地面に叩きつける。割れた剣先からは白銀の剣先が覗いていた。
その真剣は音もなくハイリに降りかかろうとした。だからぼくは無我夢中でジルバートの腰に抱きついた。ジルバートは膝から崩れ落ちると、ぼくを細目で見てぼくを腰に巻きつけた闘牛のような勢いでハイリに向かっていった。
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