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第70話

「それではカロスよりジルバート。シャルメーニュより、オズワルドの剣舞を始める」  ぼくらは2メートルほど離れて対峙した。大円庭の中心に円形の台が置かれていてその上でお互いを睨み合う。  剣舞のルールはただひとつ。決して相手を傷つけないことだ。剣撃は寸止めにとどめること。剣舞で使う剣は真剣ではないが、まともにくらえば青痣になるほどの木刀だ。ぼくはイルファ先輩の剣舞の軌道が読めずに、何度も体をぶつけてしまった。そのせいで身体中青痣だらけだ。それを不憫に思って、毎回練習終わりにレフさんが傷の手当てをしてくれた。  相手が攻撃の型を構えてきたので、ぼくはすかさず防御の型を構えた。利き手の右手で剣を握り、体の中心に立てる。左手は右手よりやや前に出し、相手の軌道を払えるように拳を握る。  甲羅の型と呼ばれる防御術だった。 「っ」  カロスの寮生ジルバートが大きく一歩詰めてきた。ついで2足目も早い。ぼくは数歩後ろに下がる。丸く縁取られた舞台の白線を越えると退場になるため、後ろに下がるときは気をつけなければならない。ぼくは後ろに目を向けつつ、ジルバートの一撃を交わした。相手は剣を右斜め上から払うようにして切ってくる。  まずい。獅子の型だ。超攻撃型の舞に会場が激しく沸く。ぼくは防戦一方でジルバートに付け入る隙はないように見えた。

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