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第39話

「シュウもこっちおいでよ。冷たくて気持ちいいよ!」  アレンと一緒に水をかけ合っている様子を眺めていた俺にクインはそう声をかけてきた。左手首を隠すために薄手の長袖パーカーを着ていたが、思ったよりも暑くて遊ぶ気力がわかなかったのだ。 「シュウ。俺もう降参。クインの相手変わって」  疲れた顔でアレンがこちらに歩いてくるので入れ替わりになってクインの相手をする。まだ二十歳という年齢のクインだが、見た目的には高校生くらいにも見える。それほどまでに童顔なのだ。  初めて見る海にほんとうはどきどきとしていた。塩辛い海の匂いに鼻が膨らむ。ざらざらとした足の裏の感触も新鮮だった。地球上の七割を占めているのが海水だと学校で習った記憶がよみがえる。今、たしかに俺はその七割の水の中にいる。それが不思議で、嬉しくてたまらないのだ。クインに負けず劣らずはしゃいでいたらしい。アレンが手を叩いて笑う。 「シュウ。海を知りたての子供みたいな顔してる。写真撮ってもいい?」  写真はちょっと恥ずかしいなと思って手をバツにしようとしたら、クインが体を寄せてきた。アレンが内カメラにしてこちらに近づいてくる。 「スリーツーワン」  アメリカ式の音頭で写真を撮った。すぐにクインが見せて見せてとアレンにせがむ。俺も二人の隙間からそっと覗き見た。変な顔をしていないだろうか。写真を撮るなんて初めてのことでうまく笑えたかもわからない。でも嫌な気はしなかった。この二人となら何枚だって写真を撮ってもいい。心からそう思えた。

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