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第38話 海へドライブに行こう
「シュウは車持ってないでしょ。だから後部座席でゆっくりしててよ」
俺は免許も持ってないけどな。そんな言葉を飲み込んで頷いた。アレンは昨日の夜にコンビニで買っておいたおにぎりを頬張りながら目を擦っている。アレンは大の和食好きらしく、この間のようにアメリカの料理も作れるが和食はもっと得意だという。もともと、秀治と同じように厨房スタッフとして働き始めたがガタイのいい体を使わなきゃ損とばかりにダグにホールスタッフとして駆り出されたらしい。まだ入店一年目とあって客足もまばらだったためダグ一人で厨房を回せたが、三年も経つと一人では収集がつかなくなり秀治が厨房スタッフとして加入したという話だった。
「じゃあレッツゴー!」
陽気な掛け声とともに車が発進する。想像の十倍も安全運転だったので秀治は拍子抜けしてしまう。アレンは助手席に座りクインのサポートをしている。地図アプリを見ながら目的地へと向かっているらしい。窓から見える風景が都会からだんだんと田舎の景色へと変わっていく。
「やっとついたー!」
「おつかれクイン」
アレンとともに労いの言葉をこぼすとさっそくクインが上着を脱いだ。下には際どい短さの水着を履いている。こんなところまでその丈の長さで来るのかと唖然としていると、どうやらアレンも同じ短さの丈だったらしく二度驚いた。秀治は自分の貧相な体を見せたくなかったのでパーカーを着たまま砂浜へ向かう。月曜昼間の海水浴場は人がまばらで歩きやすかった。これが土日ともなればパラソルやレジャーシートの大群のせいで思うように歩けないだろう。
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