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第144話 R18

 拓馬はアレンの腕を掴むと脱衣所に向かって歩いていく。空気が変わった気がして秀治は自分の体をぎゅっと抱きしめた。 「僕たちも出ようか」 「うん」  義則の言葉にクインが素直に応じる。ざぷんと湯船が揺れた。まだ入ったばかりの唯斗と秀治はそれを黙って見送った。しばしの沈黙が流れる。秀治は拓馬の言った言葉を思い出して赤面する。 『それも大部屋貸切。言ってる意味わかるよな』  あのベッドを見た瞬間からそれは確実に起こる出来事なんだろうなと思っていたが、深く考えないようにしていた。一度それを想像してしまえば、きっと唯斗のことを真っ直ぐ見られなくなるような気がして怖かった。 「シュウくん。どうしよっか」  ふと、小さく息を吐きながら唯斗が聞いてくる。 「何を?」  予想はつくがそう聞いておく。ふっと笑われた。 「したいか、したくないか。選んで」  真っ直ぐな瞳で見つめられ言葉に迷っていると、ごめんと頭に額を乗せられた。 「シュウくんの困り顔って可愛いから。見たくなるんだよ、無性に」  返答に困る物言いに黙りこくっていると、くっと顎を持ち上げられた。その手が熱くてびくりと体が震える。ちゃぷんと湯が跳ねた。 「俺はしたいよ。ものすごくね」 「俺は……」  どう伝えたらいいのかわからない。でも込み上げる気持ちを伝えなきゃと思い至って、気づけばいつもは言わないようなことを口にしていた。 「俺もしたい……けど、恥ずかしくなって途中でやめてって言うかもしれない」  ほっと安堵したように唯斗が笑う。おいで、と腕の中に導かれる。そのまま唯斗の胸に額を埋めた。 「恥ずかしいのは当然だよ。俺だって自分のセックスを見られるなんて恥ずかしくてたまらない」

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