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第2話
意識がぼんやりと確かになっていく。
あれ、僕は死んだのかな。
「おい、おーい、柊!授業中に居眠りするな」
いや、生きてる――?
僕は今教室にいて、席について授業を受けているらしい。授業の担当の先生らしき男性教師が僕を見ておーい、と声をかける。
「何これ、夢……?」
「柊、お前大丈夫か?残念だがこっちが現実だ」
ははは、とクラスメイト達が笑う。
次の問題いくぞ、と先生が黒板に向かった。
僕へ向けられた一瞬の注目はすぐに消えていく。
これは、一体なんだ。
柊って、誰だ。僕を見て柊と言ってた。
僕が柊なのか?
それに、なんだかこの教室見覚えあるな。
昔僕が少しだけ通ってた高校の校舎に作りが似てるような。
ちょっとまて、さっきの担任の顔って。
「川崎先生っ?」
ガタッと立ち上がって叫ぶように言った。
そうだ、僕が書いた漫画の主人公の担任の先生、川崎先生だ。
「おお、どうした柊。急にやる気になったか?」
「す、すごい、喋ってる……」
「柊、お前、……ほんとに大丈夫か?」
「あ、だ、大丈夫です。すみません」
慌てて席に座る。
もしかして、俺、あの時死んで、自分の描いたこの漫画の世界に転生した――?
じゃあ、この教室に主人公も居るはず。
主人公と結ばれる彼も。
当たりを見回して、視線が止まる。
あ、あそこ……。
僕が高校1年生のとき、数回だけ座った席と同じ場所。
そこに彼は座っていた。
健康的に薄く焦げた肌。短い艶やかな黒い髪。肩幅はしっかりしていて、広い背中。
じっと見つめていたら、彼がこっちを振り向いた。
切れ長の目にスっと通った高い鼻。
精悍な顔立ちに少しドキリとする程だ。
見られていたことに少し戸惑ったのか、軽く笑う彼。
楠木聡介(くすのきそうすけ)。この漫画の主人公と結ばれる運命にある男だ。
「本当にいた……」
ボーッとしている僕に、反応がないと思ったのか、バツの悪そうにまた前を向き直す聡介。
こんな、こんな幸せな事ってあるのか。
まさかリアルに自分がかいた主人公たちの恋愛ドラマが見れるなんて。
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