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第12話

圭太の向かいに座っていた女子生徒がガタッと席を立つ。 「それあたしの前で言う!?」 「は?別にあやかちゃんと付き合ってるわけじゃないし良くない?」 「っ!つかアンタもなんなの?圭太に構って欲しくてワザとグラス倒したんじゃない?地味な癖にやり方汚ねーんだよ!」 女子生徒がティーカップに残っている紅茶を思い切り僕に向かって投げつける。 熱々の紅茶が僕に降りかかる、筈だった。 瞬時に間に入って僕を庇ってくれたのは、僕よりずっと広い背中の聡介だった。 聡介の綺麗に仕立てられた燕尾服に紅茶が染み混む。 「落ち着いてくれないか。柊はワザとそんなことするような奴じゃない」 さっき入れたばかりの紅茶だったから服越しだと言っても熱いはずなのに。 「でもっ!」 「あの、何か勘違いしてるみたいだけど、そもそも僕男です……」 「は……何それっ!」 自分の失態の恥ずかしさに耐えきれなくなったのか、あやかちゃんは走って逃げて言ってしまった。 「え、君男の子なの?やば」 「はい、なので連絡先はちょっと」 「ますます気に入っちゃった。ねね、ズボン濡れちゃったからさあ、貸してくれない?柊くん、だっけ。今日はメイドのまま居ればいいじゃん可愛いんだし」 ね?とニコニコと楽しそうに笑う圭太に呆れて溜息をつきたくなる。 「ダメに決まってるだろ。俺の体操ズボン貸してやるからそれでいいだろ」 聡介は眉に皺を寄せて圭太を睨んでいる。 「なんでお前みたいなむさ苦しい男のズボン履かなきゃ行けないんだよ」 圭太も負けじと睨み返す。 「だったらそのまま返ってもいいんだぞ」 「楠木くんっ、僕のせいなんだしその言い方はちょっと」 「じゃあ柊くんの体操ズボン貸してもらおっかなあ」 「柊のはサイズが合わないだろ。俺のを貸してやる」 「はいはい……分かりましたよ」 そういって、結局聡介からしぶしぶ体操ズボン受け取る圭太。 「隣が仮更衣室だから、そっちで着替えたらいい」 「じゃね、柊くん」 顔を覗き込むようにぐっ、と至近距離で近づけてきてに、と口の端をあげて笑う。 ち、近いな。 ぐい、と引き剥がすように聡介が圭太の胸を手で押す。 「早く行け」 睨み合う二人。早速仲悪いなこの二人、さすが美緒を取り合うライバル。

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