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第13話
それにしても、さっきの一連の騒動なんか既視感あるな。
そう思って、思い出す。
美緒が紅茶をかけられそうになって聡介が庇う描写が確かにあった。
やっぱり、漫画のストーリーと流れが全然違う。
ぐるぐる考えながらも残りの時間仕事をこなす。
「さっきの楠木くんめっちゃかっこよかったねー」
「本当の執事って感じで素敵だった!」
女子二人組のグループが嬉々として聡介をテーブルに引き止めて褒めまくっている。
確かに、さっきの聡介はさしずめご主人を庇う紳士な執事と言ったところだろうか。
格好よかった、本当に。
僕が女子だったら惚れていたかもしれない。
「手袋までしてるんだねー」
一人が聡介の腕に手を触れる。
困った顔で、苦笑している聡介。
ジリ、とまたさっきのみたいな感覚が蘇る。
焦げ付くよな胸の痛み。
嫌な感覚だ。
「はいはい、お触り禁止です」
他の男子生徒がナイスタイミングで止めに入る。
「ええー」
「なんだあ」
そういってしぶしぶ手を引っこめる女子二人組。
その様子にほっ、と胸を撫で下ろす。
ん?なんでこんなにホッとしてるんだろう。
聡介困ってたし、ちょっと不憫だったからかな?
そんな事を考えていたら前半メンバーと後半メンバーが交代の時間になる。
皆は宣伝の為に着替えないらしい。
僕は流石に恥ずかしくて着替えようと、仮更衣室の扉に手をかける。
「あの、劇を見に行きたいんですけど、どっちですかね?」
後ろから声をかけられて、振り返った。
一般客の中年男性だ。きっと、誰かの保護者だろう。
「ああ、それなら体育館ですよ」
「体育館までの道分からなくて……案内して貰えますか?」
「はい、もちろん」
着替えるのは時間がかかるし、後にするしかないか。
そう思って中年男性と体育館を目指して廊下を歩いていった。
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