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第23話
聡介の部屋に通される。清潔そうな青色を基調とした部屋。
きちんと整理整頓された勉強机の棚には難しそうな本が並んでいる。
流石学年一位なだけあるな。
ベッドの横に置かれたローテーブルに、美緒が座る。僕はその隣に座った。
「ちょっと待ってな、お茶入れてくるわ」
「あ、それなら僕も手伝う」
「いいよ、座ってて」
そう制されて、渋々また座り直す。
美緒はというと、本棚から勝手に漁って漫画を読んでいた。
さすが美緒。他人の家でも自分の部屋のように寛いでいる。
すぐにお茶を持ってきた聡介が部屋に戻ってくる。
「今日親居ないから、あんま畏まるなよ。美緒は寛ぎすぎな」
若干緊張している僕を見てそう言ってくれたのだろう。
さっきまであまりちゃんと見ていなかったけど、白の清潔そうなワイドタイプのTシャツに、黒のハーフパンツといういつもは見ない私服が爽やかで似合っていて、凄く格好いいな。
「あっ、良いとこなのに!」
聡介が美緒の読んでいる漫画を取り上げて、美緒が軽く文句を言う。
でも、やっぱり緊張する。
僕今、聡介の部屋に居るんだな。すごく変な感じがする。
何回か描いた聡介の部屋。
あまり細かく描いてはないから色々な物が置いてあって、それは僕が描いたものじゃなくて、聡介が生きてきた中で集めたもので。
聡介がここでちゃんと生活しているんだなと感じて、なんだか不思議な感覚になる。
しかも、この間告白された男の子の部屋に居る。
その事実が妙にどきどきさせられる。
「さ、宿題やってこー」
一番やる気のなさそうだった美緒が張り切った様子でドリルを開く。
このテンションいつまで続くだろうか。
「まずは数学からか?」
黙々と聡介はページをこなしていく。
美緒も学年10番以内をキープしている頭脳の持ち主なので、なんだかんだで問題を解いている。
僕はというと、正直頭は良くない。
と言うか、康太の時の僕は入院生活が長かったせいで、まともに勉強を受けられていなかったからと言うのが理由でもある。
なんとか自力で勉強してはいたけど、やっぱり遅れはある。
この世界に来てから授業をまともに受けていたけど、1年生の時の勉強がまともに頭に入っていないせいで、なかなか追いつけないでいた。
「えっと、ここどうやればいいの?」
向かいに座っている聡介が、顔を上げて「ん?見せて」と手招きする。
ドリルを反対向きにして問題を指差して、ここ、と言って見せた。
「横、来て」
トントン、と隣を指で叩く。
恥ずかしいけど、教えてもらうのに抵抗するのもおかしいし、おずおずと横に座る。
美緒はニヤニヤと笑いを堪えきれないらしく、本で顔を隠している。
「ここは、このXが、」
聡介が説明しながら肩を寄せて近づく。
肩と肩がぶつかって、そこが熱を帯びていくのがわかる。
「ってこと、わかった?」
やばい。緊張し過ぎて何も聞いてなかった。
「へ、」
ポカンとしている僕に、おい、と苦笑して眉を寄せる。
「何も聞いてないな」
そう言って頬っぺたをぐい、と引っ張られる。
「いひゃい、ご、ごへん」
その時、プルルル、とスマホの着信音が鳴る。
「あ、ごめん、ちょい待って」
美緒のスマホらしい。緊急の電話らしく、スマホを片手に慌てて部屋を出てていった。
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