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第35話

秋も終わりが近づいてきて、窓から吹く冷たい風に少し身を竦める。 放課後、ホームルームが終わると、美緒が何やら他の生徒と約束があるみたいで急いで体育館のほうへ走っていった。 あ、ノート忘れてる。 確かこれ、明日提出の課題があったはず。 ノートを持って、美緒を追いかける。 体育館へ行くと、楽しそうに美緒と他の女子生徒達でバスケをしていた。 声をかけようと思ったけど、あまりに楽しそうで少し待っていようと、2階に登る。 柵に肘をついて、走り回る美緒を見つめる。 黒い髪をひとつ括りにしていて、走ったりジャンプしたりする度に綺麗な長い黒髪が揺れる。 口を大きく開けて顔をくしゃりとさせて笑う美緒に、明日美の面影を見る。 「明日美……」 思わず、声を出して名前を呼ぶ。ここに居るはずもないのに。 「柊?」 名前を呼ばれて、ハッとして振り返る。 聡介だ。 「どうしたの?」 驚いたような顔で僕を見る聡介に、僕は首を傾げる。 「柊は、康太なのか?」 突然、前の自分の名前を呼ばれてフリーズする。 いま、なんて。 「なんで、?僕の名前っ……」 驚くを通り越して息が詰まりそうになる。 久しぶりに呼ばれたその名前に、懐かしさと哀しさで胸が押し潰されそうだ。 「柊、柊は一体誰なんだ……?」 腕を掴まれて、真剣な表情でそう言った聡介に、僕はゆっくりと口を開いた。 そして、僕、新井康太の全てを話した。 ****** 聡介side 柊の姿が教室に見えなくて、探していると体育館で美緒がバスケをしていたのが目に留まる。 もしかして、と思ったらやっぱりそこに柊がいた。 体育館の2階で柵に肘を付いて美緒のバスケをじっと見ている。 美緒を愛おしそうな眼差しで見つめている柊に、胸がじり、と痛む。 同時にその姿が夢で見た、明日美という女の子を愛おしそうに撫でる康太に面影が似ているように思う。 そっと2階に上がって、柊に声をかけようとしたその時だった。 「明日美……」 美緒を見ながらそう言った柊に、やっぱりと思った。 あの時、保健室で聞いたあれは、聞き間違いなんかじゃなかった。 「柊?」 声をかけると俺がいると思っていなかったのか、少し肩をぴく、と揺らして振り返る。 「どうしたの?」 俺を見て、不思議そうに首を傾げている。 「柊は、康太なのか?」 そして、俺の言葉に驚いたように固まる。 「なんで、?僕の名前っ……」 その応えに疑問がほとんど確信に変わる。 柊の腕を掴む。 「柊、柊は一体誰なんだ……?」 そして、柊は全てを話してくれた。 この世界より前の世界の、いや、この世界の原点の話しを――

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