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地球とさよならをした男 2
これまでの人生の想い出が、走馬灯のように流れていった。
例えば自分のよくない行動で不幸が連鎖していってしまったのならば、
あの時ああしていればと後悔の一つでも出来ただろうけど
一体どの選択肢を間違って、こんな侘しい結末を迎える羽目になったというのだろう。
そもそも選択肢なんてあったのだろうか。
始めから自分には用意されていなかったような、そんなどうにもならないような問題を抱えながら、
自分はよく頑張って生きていた方だとも思う。
生まれ持った男の身体も、その割に男にしか惹かれないという性質も
産まれる時代や国や親を選べないように、自分ではどうにも対処しようがなくて。
受け入れてくれる人間も増えているような時代だったとはいえ、
タイミングかもしくは環境が悪かったのかもしれない。
学生の頃は、ホモ野郎だと虐められていた。
小中学時代は地獄みたいな日々を過ごし、
高校になればどうにかそんな状況を変えたくて
自らわざとらしくそういうキャラ付けをして明るく振る舞った。
面白い弄られ役に徹して、虐めとまではいかずに済んでいたのは我ながら賢かったと思う。
プライドだのなんだのは早々に捨て去って、
ちょっとバカにされながらも憎めない奴だと可愛がられた方がずっと楽だった。
本当の友達とか、それこそ恋愛とか、
そんな深い関係は構築出来なくとも、突然頭から水を被せられるよりはマシだったから。
そうやって学生時代に培った世渡り上手さを活かして、
仕事もそれを取り巻く人間関係も表面上では上手くやっていたと思う。
仕事に熱中していれば、恋愛とか友達とかそういった人間関係からは遠ざかれて都合が良かったのもある。
だけど、ブラック企業に流れ着いたのが運の尽きで、
睡眠時間や余暇を削らざるを得なかったのも
それによって健康的な生活とはとても言えなかったのも
やっぱり自分の努力だけではどうにもならなくて。
気が付けば修復不可能な難病に侵されてしまうし。
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