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第7話 怪物としか言いようがない

雪也は自分の外見が人を惑わすことを知っている。 どうやら、そこに男も女も関係ないらしい。以前奈良崎が言っていた『謎の色気』のせいなのか何なのかは知らないが、彼を拒もうとする人間はそうそう居ない。 初めて付き合った女の子とは、雪也の高校の進学先が他県であることで上手くいかなくなり結局別れてしまったが、その後も男子校に進学した割には絶え間なく女性の恋人がいたし、同じ男子校の生徒からもやたらと想いを寄せられて一々穏便にあしらうのは本当に面倒だった。 清楚な印象の艶やかな黒髪、大きくて色素の薄い澄んだ瞳、長いまつげ、きめ細かな白い肌、紅い唇。実年齢よりも幼く見られがちなそれらの整った配置はまるで少女のように可憐に見える。 加えて着痩せする体躯のせいか繊細で大人しそうな印象だ。男性にしては高めで優しげな声と知的で柔和な話し方も人を緊張させにくい。 ただし性格は外見にそぐわない程に良くも悪くも男性的だったが、普段の彼の言動からそれを見破れる人間は滅多にいなかった。 19時。雪也は初めて訪れた上月家のリビングで、入れてもらったサイダーを飲みながら、緊張した様子の正宏に向けて艶然と微笑んだ。 まだあまり築年数の経っていない綺麗な2階建ての注文住宅。リビングダイニングは広々として十畳くらいはありそうだ。 ダイニングテーブルには4脚のダイニングチェアと、小さな子ども用のベビーチェアが一脚。 「ちっちゃなイス。妹と弟の?」 雪也は母の麗子から、正宏に年の離れた弟妹が産まれたことを聞いていた。 「うん、なんか俺だけ年離れすぎててサザエさん状態」 「そういえば今日おじさんたちは?久しぶりなのにご挨拶できてない……」 何気なく聞いただけだったが、予想していなかった答えが返ってきた。 「あ、親父と母さんはチビたち連れて昨日から田舎帰ってて、俺だけ大会近いから部活あって残ってる。いちお、部長だし。 へ…ヘボキャプテンとか言われてるけど」 正宏の両親の実家は岡山の田舎の谷間の村だと、小さいころ蛍を見に一緒に連れて行ってもらったことがある雪也は知っていた。 昨日からいない? いつまで? 「………ふぅん」 正宏の家族の動向までは把握していなかった。思いがけず二人きりになれたと分かって、胸が苦しくなる。が、ここぞとばかりに笑顔を作った。 「すごい!頑張ってるんだね、エライなぁまーくんは。」 「もっ、もう、一人でも平気だよ」 「ご飯とかはどうしてるの?」 にこやかに問いかけると、 「あ、母さんが3日分作り置きしてくれてるから。」 アッサリと、正宏はいつまでこの家の保護者が不在なのかを漏らしてくれた。 「そっか、……明後日まで一人で居るんだ?」 念を押して情報の裏取りをする。 「うん」 誇らしそうに胸を張る正宏が可愛くてニヤついてしまう。 「あっ、ウソ。わー、どうしよう。」 下を向いて上体を屈ませ困ったふうな声で言うと、正宏は慌ててどうしたの?と心配してくれた。 「ごめん、まーくんビニールテープか、ガムテープあるかな?」 雪也が両手を合わせて上目遣いにお願いすると、 「なーんだ、あるよ。何か直すの?」 言いながら正宏は一旦クローゼットの方へ行き、すぐに大きな収納ボックスの引き出しを抱えて戻って来た。 「えっ、引き出しごと?」 と驚く雪也に、 「ハイ、なんかいっぱいあった」 とニコニコしている。 あまりに真っ直ぐで善良な正宏にさすがに良心が咎めて、雪也は薄く笑った。 「ありがとう…………ハハ、変わってないな、まーくんは。いつだって真っ直ぐに信じてくれる」 やや細めの黒い布ガムテープを2巻手に取った。新品なので外装を剥がす。 「……それも、まだ持っててくれたんだね」 外装を剥いたガムテープを履いているジーンズの後ろポケットに仕舞いながら、もう片方の手で正宏の胸元に下がっている水晶のペンダントを指差して言うと、 「うん、俺の、大事なお守りだから」 「見せて」 「うん」 両手で大切そうにそっと包む正宏に駆け寄って、水晶を包む指先ごとキスをした。 正宏は酷く驚いたようでビクビクと背中から跳ねるように揺れている。 「なつかしいな」 少しの間、見詰め合った。ふと、思いが溢れる。 「ずっと、会いたかった」 そうだ。ずっと会いたかった。離れている間寂しくて、悲しくて、生きてること自体が虚しかった。 欲しくて、欲しくて、心配で、愛おしくて、知らない間に喪うんじゃないかと想像しただけで耐えられないほど。 正宏の手を握ったまま、泣き出しそうな正宏の黒い瞳が懐かしくてじっと見ている間に、唇に吸い付かれた。 正宏からのキスだった。 そのまま、掻き抱くように強く抱きしめられた。正宏の長い腕にすっぽりくるまれてしまって、彼が成長したことを実感する。その愛情表現が、想像していたよりもずっと嬉しかった。硬めの短髪が雪也の耳と額に当たり、いつか嗅いだことのある懐かしい匂いがした。 少し酸っぱいような感じのする汗と、石鹸の混じった匂い。 正宏の胸が早鐘を打っているのが雪也にまで伝わってくるが、雪也も同じ状態だった。幸福感で頭がふわふわする。 正宏が自分に恋をしていることを雪也は昔から知っていたが、今もそれが終わっていないことが再確認できた。勿論、雪也の方も異常な執着を抱きながらここに居る。 なら。もう。 いいよね。 触れるだけのキスをして、それだけで真っ赤になり震えて離れようとする正宏の首に手を回してそっと引き寄せた。 「まーくん、もっと。今度はお口開けて」 甘えるように言うと、正宏は素直に口を開け、雪也の舌を受け入れてくれた。 二度目のキス。 正宏の唇を貪るのは初めてで、雪也の頭も更にぼうっとなる。何度も角度を変えながら夢中で舐め、ついばむように吸い付いた。 正宏の舌は柔らかく、とろとろと濡れていて吸い出せばそれに応えるが、小さく震えていた。どうしたらいいかわからない、という戸惑いを感じる。 心底かわいらしいと思えた。遠慮がちな舌を追いかけ、甘噛みし、何度も何度もゆるく吸う。 正宏の頭を抱え込み、頬と耳にもちゅ、ちゅと音を立ててキスをした。その度正宏の背筋が大きく跳ねる。 額にキスをし、瞼を舐めた。短いまつげを吸い、頬に軽く歯を立て、しゃぶり、首を舐め、吸い付く。 正宏はなすがまま、雪也の愛撫に翻弄された。 声を上げるのを必死に我慢しているようだったが、トロンとした目で荒く息をしている。 「お耳、舐めてあげようか?」 「………うん……」 猫が飼い主に甘えるときのように正宏の顎の下に頭を擦り付けて言う雪也に、正宏はつい頷いてしまった。 「イイ子。いっぱい気持ち良くしてあげるね」 「あ、ゆきにぃちゃ……っ」 耳にしゃぶりつかれ、丁寧にくすぐられ、舐め上げられ、声を我慢しきれなくなったのか、正宏の口から余裕の無い声が漏れ始めた。恥ずかしそうに自分で口元を押さえていたが、それでも抑えきれず、 「や、あ、あっ」 戸惑うように漏れ出る声、弾むように反応を返す肩、腰、背中が、可愛いらしくて仕方なかった。 「かわいいね、まーくん。お耳きもちいいの。」 「あ、ァ、だめ、だめ」 「かわい……」 荒くなった雪也の吐息が耳に注がれ、正宏は腰からビクビクと震える。 「昔も、何度もこうしてあげたの、覚えてる?」 「…………」 正宏は、無言で頷く。 「これ好きだったよね?お耳、こうして、びちゃびちゃにされるの。」 「ア、ァ、や」 「ねえ、ちゃんと教えて?これ、気持ちいいんでしょう?」 「うん、……きもちいぃ」 「なら、もっといっぱいすごいことしちゃおうか。」 「えっ」 「二人きりだし。ね。嫌かな?」 雪也は上目遣いで少し遠慮がちに言うと、祈るような気持ちで正宏の瞳を見詰めた。 「…………やじゃない、です」 首まで真っ赤にした正宏が小さくボソボソと言ったのを聞き、最後のリミッターが外れる。 「嬉しいな。もう我慢しなくて良いんだ。長かった……ずっと待ってたんだよ、まーくんが僕に追い付いてくれるのを」 いつかのように蕩けた表情の正宏の頭を撫でながら、そっと正宏を後ろに倒して馬乗りになり、雪也は微笑んだ。 ぼーっと寝転んだままの正宏の両腕を脚で押さえ、その目の前でガムテープをビッと引く。 「もう子どもじゃないよね?抱いても、壊れたりしないよね。」 やっと、やっとだ。 もう雪也の凶行を止められるものは何も無かった。 さあ抱くぞ、とわざわざ宣言してやったのにも関わらず正宏は雪也の言葉を理解してくれなかった。 ぽかんと下から眺められ、ちょっと力が抜けそうになったが、耳への愛撫とキスで腰が抜けたせいか正宏があまりにもぼんやりとしていたので、試しに壁際に置いたイスに座れと指示をしてみた。 既に思考停止しているのか、驚いたことに足元をフラフラさせながらも言われたまま従う正宏の胸元をイスの背凭れごとガムテープでぐるぐる巻いて拘束するのもそれほど苦労しなかった。 長身だが痩せているので、体重も筋肉質な雪也とさほどには変わらないだろうと考えて、無理矢理力ずくで犯すことも選択肢にはあったし、長い手足を拘束する為には一旦チョークでもかけて頸動脈を圧迫し絞め落とさないといけないかな、とも考えていたが必要無かった。 正宏は訳も分からずイスにぐるぐる巻きにガムテープで固定され、騒ぐでも暴れるでもなくただハテナを浮かべた表情でオロオロしているだけだ。まだ今一自分の状況がわかっていない。 雪也はキッチンからオリーブオイルを持ってきた。 これである程度の潤滑剤にはなるはず。 こうなるって解っていたら、もっと準備して来たのにな。 上月家の父母がいる想定でいたのだから仕方がない。必要な道具は現地調達することにする。 本当はもっとじっくり日にちをかけて、少しずつ今の正宏の気持ちを確認しながら徐々に懐柔していくつもりだった。 けれど雪也の想定していたような正宏の成長によるプライド由来の心理的障壁などはどうやら存在しなかった。 まさかこんなにも真っ直ぐに好意を示してくれるとは。ここまで素直に誘惑に乗ってくれるとは。 可愛いすぎて、もう。 正宏の腰から、ゴワついた生地のハーフパンツと下着のボクサーパンツを無理矢理抜き取る。その段階になってようやく正宏の頭が現在の異常な状況に追い付いてきた。 「え、なに、なんで」 「なんでって、抱くんだよ。今から」 もう一度改めて解りやすい言葉に直して言いながら右手首と右足首、左手首と左足首をそれぞれガムテープで固定した。正宏は椅子にM字開脚で拘束されて下半身は裸の状態にされているのに、事態の急転にまるで追いつけなかった。 「え?」 何しろ正宏からしてみれば、初恋かつ現在進行形で未だにずっと恋い焦がれている大好きな幼なじみのお兄ちゃんとのファーストキスが出来て、それだけでもう頭は真っ白なのに更に耳や顔に濃厚な愛撫をされ、しかもその上恋人同士がするようなエッチなことに誘われてしまって、戸惑いながらも少年らしい好奇心でうっかりOKしてしまっただけだった。 過去の行為に関しても、そもそも正宏は雪也の性別が男性だということを知ってはいたものの正しく認識出来てはいなかった。 もう長い間恋をしていたが、雪也の性別を感じさせない美しい外見と長年に渡る優しい関わり方で深くバイアスが掛かっており、これまで自分と同じような『男』としては見て来なかったのが正直なところだった。 正宏の記憶の範囲では好きな人との秘密の触れ合いで、それらはただひたすら歓びと興奮と快感に彩られていた。 従って正宏は、当時の自分がどれだけ危険に晒されていたのかをまるで解っていなかった。 「セックスするの。まーくんのここに、僕のおちんちん入れるんだよ」 綺麗な長爪のしなやかな指に肛門を撫でられ、正宏は信じられない思いで雪也を見たが、その幸福そうな美しい笑みにまたもぽかんと口を開けて絶句する。 真面目な正宏には馴染みの無い単語過ぎて何を言われたのかすぐには理解出来なかった。指をぐぐ、と中に入れられる違和感と痛みで今更ながら全身が硬直する。 「かわいい、かわいいね、まーくん」 「……え?、や、な、うそ、ウソ」 「あぁ、せま……ねえ、まーくんのココ、まだ誰にもヤらせてないよね?」 素のままの中指を根元まで入れられ、正宏は痛みで青ざめた。 「いた、いたぃよ、雪にぃちゃ」 「こっちも?まだ使ってない?」 「やっ!」 答えをきちんと聞くまでもなかった。初々しい反応を見た雪也は満足そうに正宏の唇に口付ける。 「ん、ンンっ」 性器を揉まれ、尻穴に乾いたままの指を入れられ、おまけに激しいキスで息苦しくて、もう正宏には何が何やら訳が解らなかった。 「まーくん、嬉しいよ。やっと……ぜんぶ、僕のものにしてあげられる」 「ゆきにぃちゃ、やだ、やだっ」 「力抜いてね、拡げるから」 トプン、一旦抜き出した指にオリーブオイルを垂らして油まみれにすると、再び挿入する。 今度はぬるりと滑るように入った。 「うぅっ」 前を扱き立てながら後ろを拡げていく。 少し芯ができるだけで勃起まではいかないので、舌で愛撫することにした。 仮性包茎の包皮の隙間に舌を差し入れグリグリと舐め回す。続けて根元まで吸い込んでグラインドするとあっという間に完勃ちだった。 ついでに後ろの指も増やす。 ぐちゃぐちゃ音がする。 「待って、出、ちょ、待って、うわっわあぁ、嫌だ…ああ…っ」 正宏は呆然としながら、雪也の愛撫で射精してしまった。 「かわいい。まーくんの乳首って、いまだに陥没してるんだ」 休む間も与えず、言うなり正宏のささやかな乳輪に隠れた乳首を思い切り吸ってピンと立たせた。 強く吸い付いたせいでひりつき、あっという間に紅く色づく。 「ん、ヒッ……」 「うわぁ、吸い出してもちっちゃいな、あるのかないのかよくわかんないね。」 「も……止め……あ!?え、ゔぅーっ」 オイルを追加して後ろを穿つ指を強引に3本に増やす。正宏は目に涙を浮かべ苦痛に呻いていたが、もう雪也は高揚を隠せなかった。 正宏の恥ずかしそうで辛そうな表情を真正面から眺め、思わず笑みをつくる自分の唇を舐める。すぐにも自身を奥深くまでねじ込んでやりたいと気は逸ったが、下準備には手を抜かなかった。 正宏の狭く熱い内部に侵入させた三本の指の先を、奥でゆっくりと拡げる。 「ね、だいぶ拡がってきたのわかる?奥の方とか、きゅうきゅうしてて入れたら気持ちよさそう」 ぐちゅぐちゅと自分の尻穴が立てる音も、何の心の準備も出来ずに下半身を暴かれてしまったことも、もう正宏には耐えられなかった。 「ぅうーーーーーーっっ」 あまりの羞恥と、訳のわからない苦痛にとうとう泣き出してしまったが、その顔を見た雪也は陶然とし、ほう、と熱く溜息を吐く。 「すごいね、2日もあるなんて!何回この中に射精してあげられるかな」 声変わりもして、僕よりも背が大きくなって、ちゃんと射精もできる。こんなに成長したのに、性格が何にも変わってない……。 無防備でどこか抜けてて優しいお人好し。可愛すぎる。 もう、逃がさない。 雪也は既に、自分は正気では無いと感じていた。 ばさ、着ていたパーカーを脱ぎ床に放る。鍛えられた筋肉質の上半身が露わになった。直ぐにブラックのジーンズに通していたベルトの金具もカチャカチャと外した。ジッパーを下ろし、パンパンに膨れ上がったものを取り出す。 「可愛いな、こんなに泣いて……」 額同士をくっつけて首に抱き着き、慰めるように頭を撫でる。雪也の優し気な口調に、正宏は縋った。 「も、やめよっ、も…もぅヤダ、なんでこんなこと……」 「無理だよ今更。」 アッサリと却下されたが。 雪也は拡張した穴に自分の性器を擦り付け、もう一度オイルを足した。クチュクチュと音がする。吸い付くような感触。 「大きくなるまでちゃんと待っててあげたでしょう?そろそろ僕にごほうびをくれなくちゃ」 先端を押し付け挿入しかけたが、 「や、もうヤダ~!」 小さな子どものように泣きはじめた正宏が可愛くて、ぎゅっと抱き締める。 「まだ、入ってないよ。ふふ、そんなにむせるほど泣かなくても。あぁ…でも」 ふと、イスに拘束したままでは体位が変えにくいな。と思い至った。 「どうせこれじゃ奥まで入らないね、降ろそうか」 ガムテープをはがしついでに着ていたTシャツも脱がされ、正宏はとうとう全裸にされてしまったが、イスから解放されたことでもう終わったと思ったようで明らかにホッとし、 「も、もうおわり?おわった?」 等と言うが、雪也はそれを呆れたように嗤った。 「終わるわけないでしょ。やだなぁ、まーくんから誘ってきたくせに。」 「さそっ……?そんなこと、してな」 「もうっ、酷いな。ついさっきのことも忘れちゃったの?まーくんが、先にキスしてきたんでしょ?」 「……ごめ、なさ、おれ、そんなつもりじゃなぃ、も、やだ。ごめんなさい、も、……ゆるしてくださ……っ」 否定が通らない、もう恥ずかしくて止めて欲しいのに、汲んでもらえない。正宏はどう事態を変えれば良いのかが解らず混乱していた。 雪也に背後から捕まってしまい、また尻穴を指でグチュグチュとほじられて、正宏はもう身体は自由にしてもらえていたのにぎゅっと瞑った瞼から溢れる涙を両手で擦るだけの無抵抗状態だ。 「ふぅん。『そんなつもりなかった』の?それは知らなかったなぁ」 解りきっているウソを意地悪く言う。 勿論、触れるだけのキスが精一杯だったことも、それ以上のことなど思いもついていなかったことも、まだその先までは望んで居なかったことも、ことここに至ってもまだ自分が犯されるということがよくわかっていないらしいことも。全てを雪也は承知していた。 「ほんとに、我ながら良く今までガマンできたよね……」 小さく独り言を言いながら、正宏が目も開けられないでいる間に、雪也はジーンズを脱いで自分も裸になり、押し倒した正宏に乗り上げ両足を抱えた。にゅるにゅると股間に擦り付けながら正宏の泣き顔を凝視し、ゆっくりと腰を押し付けながら自分の先端で穴の位置を探る。 狙いを付け、オイルをたっぷり塗り込んで濡らし解した穴に、にゅぐぐ、と入っていく。 「ええ、なに?なに、なに、んぐう、ぅ?!」 「あれだけ時間かけた割に狭いな………。ほら、わかる?僕のおちんちん、入っちゃったよ。」 いきなり腰骨が尻に密着するまで一息に押し込んだせいで、正宏は息もろくに吸えなかった。 「なんて、それどころじゃないか。パニクってるし」 泣くわパニクるわ噎せるわで、正宏はどう見ても到底扇情的でも色気のある状態でもなかったが、そんなことは雪也にはもう関係なかった。 愛しい子の体内に侵入出来た事実が嬉し過ぎて、目眩がする。そこは狭くて、熱くて、ぎちぎちと雪也の雄を締め付けてくる。 すごい、まーくんのナカ。まーくんの中だ。ああ。根元まで入るなんて、ホントに大きくなったんだね。ずっと、こうしてやりたかった。 なんて可愛いんだろう。こんな風に、僕に泣かされているこの子を犯したくて、犯したくて、ずっとずっとめちゃくちゃにしてやりたくて、たまらなかった……。 ぞわあ、と腰からせりあがる歓喜が脳を溶かす。 長年望んだものがやっと手に入った。 何度も夢に見て、妄想して、堪えてきた欲が叶った。 雪也は快感に落ちてくる瞼を必死に見開いて、灯りがついたままのリビングダイニングのフローリングの床の上で犯されて泣きじゃくる正宏をじっくりと眺め、満足そうに目を細めた。 ぐぐぐ、と更に腰を押し付け、両足をつかんで引き寄せ、もっともっと奥深くまで侵入しようとするが既に性器の付け根まで埋め込まれていた。ずるずる抜き出すと、ちゃんと自分の長さが確認できる。 これが全部、この子のなかに。 「……………わぁ」 嬉しかった。嬉しくて、我を忘れた。 上半身を浮かせ、しっかりと結合部を見ながら腰を使い抜き差しする。何度か抜けそうに腰を引き、根本までばちん!と深々突き立て、正宏の中に出入りする自分を観察した。 その光景に夢中になりすぎて、初めての慣れない苦痛に苛まれている正宏を思いやる余裕が無かった。とうとうパニックを起こした正宏が暴れだす。 「うわぁああぁ!もう、やだああぁ!」 脚をバタつかせ、腕を振り回し、必死で逃れようとする正宏の肘が雪也のこめかみをかすった。 肘に何かが触れた感触で正宏は我に返り、雪也がこめかみを手で押さえ、痛そうにしているのが見えた途端自分の苦痛も忘れてしまった。 「あ…っ!…ご、ごめ、ごめんなさいっ!お、おれ、あ、目?!……じゃなくて良かった、でも赤くなってる……?」 正宏がそっと雪也の額を撫で、謝り出したのを見て、雪也はこめかみから手を離した。 「こんな時に、僕の心配?」 ケロリとして言う。 「抜きたくないから避けなかっただけだよ、自分が今何されてるかわかってる?」 雪也は正宏の両足首を思い切り持ち上げ、床に押し付けた。 「わぁ、まーくん身体軟らかいんだね」 仰向けで頭の両側に足がきて、苦しかった。尻だけ高く突き出した体勢で上からガンガンに突き込まれ、正宏は何度も悲鳴を上げるが、雪也はもう止まらなかった。 「ていうかどこまでお人好しなの。……ハイハイ、もう、暴れない、暴れない。」 「あぁぁあ!ゃあぁ!」 「あー、クッソ可愛いな」 乱暴に口付け、正宏の舌をがじ、と血が滲むくらい噛んで、鉄の味を楽しむ。 「ほら、まーくん、まーくん、しっかりして。出るよ。お腹の中に。ちゃんと、わかる?ほら」 苦しがり痛がるのを間近で見ながら、一度目は思い切り奥に突き込んで射精した。数回最奥でぶるぶると震え、塗り込めるように腰を前後させ、全部吐き出す。 雪也はしばらくそのままゼエゼエと息をするばかりの正宏を押さえ込んだままじっとしていたが、やがてボソリと言った。 「あー、ナニコレ。すご……。収まんないな。全然、足りない。まーくん、ほら、まだだよ。僕、こんなんじゃちっとも足りないよ。」 「……ヤ、イヤ、もう、や、やだ」 「だぁめ。逃がさないよ。」 雪也はこれまでにも恋人はいて、それなりに男として性交の経験もあったが、女の子相手にコンドーム無しのセックスなど一度もしたことがない。直に濡れた肉の中に挿入したのも、何にも隔たれず直接相手の体内に射精するのも、これが初めてだった。 惚れぬいた相手との強すぎる快感に溺れ、理性なんてもうとうの昔になくなってしまっていた。 「暴れたお仕置き」だと言って正宏に体操座りさせ、膝の少し上と膝の下に回させた両手首をそれぞれガムテープで拘束した。 何の身動きも取れず前も見えないほど泣いている正宏を後ろから犯す。 膝を閉じているせいか余計狭い。その分正宏の負担も大きく、すぐに正宏は弱々しく哀願しだした。 「ごめ、なさ、も……逃げな、から、あばれないから、てくび、あしも、テープ取って。くるし……ゆ、きにぃちゃ」 可哀想な訴えを聴きながら、雪也は正宏の性器をもみくちゃに扱きしゃくりあげ震える背中にがぶりと噛みついた。鋭い悲鳴が上がり、ぎゅうう、と痛いほど中が締まる。 付いた歯形をべろりと舐め、 「……いいけど、次また暴れたら明日の夜までイスに縛るよ?」 更に非道なことを言うが、正宏はやだあ、と泣くばかりだった。 「ちゃんと、大人しくイイコにしてたら優しく抱いてあげる。イイコにできる?」 声だけは優しげに囁く雪也に、正宏は従順に頷いた。 最奥を突かれ、そこから一気に亀頭に引っ掛かった肛門がせりだすほど抜き出される激しい抽挿に、初めての身体ではとてもついていけなかった。 こんなに泣いていても、何度懇願してもちっとも楽にしてもらえなくて、正宏は呆然と宙を見つめている。 「う、エェッ」 ぐぐ、とまた内臓を押し上げられ、えづく。 「い、たいー……、ひ、ひぃん、やだあぁ、も、いたい。おなか、いたいぃ。」 「おなか?」 「おなかいたいよ、もう、もうっ」 また激しくなる動きに耐えきれなくて、雪也に必死に苦痛を訴えるが、口をキスで塞がれ腹を撫でられただけだった。 雪也は、自分の先端が正宏の体内のどこにあるのかを腹を触って確かめていた。 「すごいかわいいね、まーくん。おなか、いたいのってココ?ああ、外からでもわかるね。かわいそう……まだ濡らし足りないのかも。……もっと奥まで濡らしてあげようね」 いかにも心配だとでも言うようにあやすように言うが、甘やかなのは声だけだ。 「やだ、やだっ、ふか、ふかぃのが、ささるから、いたいからっ」 「あぁ、なんてかわいいの……まーくん、んんっ、また出るよ。ぜんぶお腹の中で飲み込めたら、テープ剥がしてあげるね」 テープで縛られていた箇所は鬱血し痣になっていて痛々しい。 約束通り手足は自由にしてもらえたが、だからといって何も終わらなかった。後ろから体内をしつこく穿たれ、泣きすぎて鼻も詰まってしまった正宏には、息をするのもままならない。 大きく開かされた足の間には雪也が座り込み、異様に硬くて大きな塊が繰り返し体内を深々と抉っていく。もう長い時間、ぐちゃぐちゃプチャプチャと濡れた音がしている。腹の中も、尻も結合部から溢れ出た何かで濡れていた。 なんでだろう。なんで、こんなことになってるんだろ。 もう正宏には、考えても何も解らなかった。 逃げ出したい。もう無理だと思った。 前に這いずろうとするが、腰を掴まれてより深く犯されるだけに終わる。 「ひあぁあ!やぁだあぁ、……ご、めんなさい、も、ゆるして」 「悪い子。イスに縛ろうか?」 「や、ダメ、だめだよお、も、やだよぉ……たすけてぇ、ゆきにぃちゃ、たすけてよぉ」 「……っ!あはは。そこで助けるの、僕なんだ?」 「あ……っ」 ぐるん、と繋がったまま仰向けに転がされた。 「もう、最高。可愛すぎる。」 何故か明らかに雪也が上機嫌になったのが、余計に恐ろしく思えてしまい、正宏はまた泣いた。 「あれ?まーくん、気持ちいいの?……暴れて、嫌がって泣きじゃくってる割には、おちんちん勃ってるけど。」 「や、やだああぁ」 両手で顔を隠して泣いていたが、雪也の咎めるような声を聞いて反射的に自分の性器を隠すように覆った。 「あはは、ごめんね?そんな必死で隠さなくても。前立腺刺激したら勝手に勃つの。ただの生理現象だよ」 激しい突き上げに何度も正宏は痛いと言ったが、雪也は愉快そうだった。 「ゆき、にぃちゃ、ぉねが」 「ん、なぁに?」 「も、ムリ、ムリ」 「大丈夫、もう手も足も縛ってないよ。イイコだからもうちょっとガマンしようね?」 「おなかが。お、なか、がぁ」 「ん、おなか苦しいの?そっか。まーくんの中、すごく狭いから……」 「くる、ひぃ」 もうまともにしゃべれない、逃げられもしない、自分を苦しめている張本人に必死で助けを求めるが聞いてもらえない。正宏の哀れさに、雪也は腰から身震いした。 「…………」 自分の暴行になす術も無い、自分より体躯の大きな正宏の姿に恍惚となる。 ゆる、腰を引き、深々と抉ってばかりいた抽挿を浅くする。 泣きすぎて腫れてきた正宏の瞼を舐め、涙を吸い取った。頬の涙も追いかけ、舐めとるとそのまま口付けた。 「…………ああ、夢みたい」 性器の半ばまでしか入れないように気を付けて動きも緩やかに変えると、正宏の苦悶の表情が幾分マシになった。 あちこち舐め、愛撫しながら性器も揉んでやると、解りやすく反応を返す。 そのまま続けていると、後ろに雪也を食んだままで、泣き声を上げながら正宏は健気に射精した。 思い通りになりすぎて、雪也はうっとりと呟く。 「この子の心も身体もぜんぶ、僕のもの……」 ぐちゃぐちゃの穴が蠕動する。正宏が達したせいだった。 「うわ……すご」 その感触を余さず味わいたくて、また根元まで突き込む。 もうゼエゼエと荒く息をするだけの正宏の鎖骨や胸元に吸い付いた。 「ずっと欲しくて欲しくて気が狂いそうだった。」 いや、もうとっくに狂っていた。 「もう二度と、離さない。」 三度目の射精も正宏の腹の中、一番奥に放つ。 「あー、きもちぃ……まーくんありがとう、僕すごくきもちいい……」 頭を撫でながら、やっと抜き出してやる。雪也の性器の先端が抜けた時ップ、と微かに音がして、中から白濁した液体が吹き出した。 「わぁ、まーくんてお尻から射精できるんだ」 つぷん、まだ閉じきれない穴からコポコポと溢れ出てくる自分の欲を掻き分けるように指を2本入れ、ぐにっと左右に拡げた。中の液体をゆっくりと掻き出す。 「あれ、ちょっと中切れちゃったのかな、この辺ピンクになってる。」 大量の精液の中に血が混じっているのに気付いたが、余計に興奮してきてしまって、雪也は笑った。 「やだな、もー、ほんとに変態」 「あぐぅ……」 「あっつ……熱いね、まーくんのなか」 「……ぅ………うっ……」 もうほとんど反応も返さなくなった正宏の両足を抱え、ズブズブとはまりこむ。 しばらく揺すっているうちにふと見ると、正宏は気を失ってしまっていた。 「あれ?まーくん?……なんだ、落ちちゃったの。まぁ、別にいいけど」 一旦抜いて正宏をうつ伏せにし、また体内に入り込む。 ふと時計を見上げると、もう22時を回っている。たくさん泣かせたせいで疲れて眠ってしまったのかも知れなかった。 「あぁ………ヤバ、もうなんか、めちゃくちゃ……」 まだ満足出来ない。 長い間ガマンし過ぎたせいかな? いつ終われるのか、僕にもわからない。 そろそろイキにくくなってきたのに、まだヤりたい。 あるいは、こんな風に無理矢理中に押し入るんじゃなくて、細胞が融け合って本当に一つになれれば……。 「このまま、融けちゃえばいいのに」 歪みきり最早拷問のようになった強姦を止められない。それでも雪也を突き動かすのは、間違いなく愛情が故の執着だった。 日付が変わったあたりでやっと満足して抜き出した。正宏はまだ気が付かない。 「かわいい」 半開きの唇をしゃぶった。それから愛おしそうに抱きしめ、頬擦りする。足が大きく開かされて、股間が体液でドロドロになっている以外は人形のようにぐったりと仰向けに横たわった正宏の横に自分も寝転び、 「ねえ、まーくん。僕、すごくしあわせだよ。ありがとう」 うっとりと言った。 沸かしたぬるま湯でタオルを濡らし、正宏の身体をキレイに拭ってやってから正宏の部屋を探し二階のベッドに運んだ。かつて雪也も通った公立中学の指定バッグが棚に置いてあってすぐにわかった。 脱衣場の収納にあった下着を着せ、自分もシャワーを借りた。 シャワーから戻っても、まだ正宏は寝たままだったが、雪也は眠れなくて正宏の頭を腿に載せると何度も撫でた。 「………ごめんね、「僕」から守るために離れたのに。これじゃ本末転倒だね。……でも、どうしようもないくらい、愛してるよ。まっすぐで、お人好しで、純粋なまーくんが、自分でも怖いくらい、大好き」 途中、正宏の意識が戻ったことに気付いたが、そのまま優しく、できるだけ優しく頭を撫で続けた。少しして、正宏は雪也を見上げると、 「あの、……あの、おれも、大好、き……?!」 言い終わる前に正宏をベッドの上にうつ伏せに転がし、背中に乗り上げガバっと覆い被さった。首を押さえつける。 「嬉しいな、じゃ、次はどんな風に可愛がってあげようか?」 どれだけ犯されたかもわかっていないのか、この期に及んでまだ雪也の愛情に応えようとする正宏が可愛すぎた。 加えて、怯え泣きしだした正宏が可愛過ぎた。 「あーあ、もう。可愛すぎ。」 頬にキスすると、ビクっと怯えて震えるのも可愛い。 可愛いので、頬にキスしただけで止めた。優しく抱き起こしてから頭を撫でる。 「ひどいこといっぱいしたのに、まだ僕のこと好きなの?」 泣き過ぎて垂れた鼻水を見てティッシュを鼻に当ててやった。大人しくちーん、と鼻をかみながら頷く。可愛い。 雪也は笑った。久々に、心の底から。笑いすぎて泣けてきそうだった。 おまけにまた自分からキスしてきた正宏に、再びスイッチが入ってしまいそうだ。 流石にもう賢者モードで思考にも余裕があるはずだったが、無意識のうちに手は正宏のTシャツの中をまさぐっている。ふと、首に下がるペンダントの水晶にキスしている正宏が見えた。 「まーくん、何してるの?」 「雪にぃちゃんに会わせてくれたから、水晶にお礼してたんだ。」 明るい表情で言う正宏を二度見した。 もうなんだか可愛いすぎて眩しい。 ぎゅうぎゅうに抱きしめた。 押し倒す。 「え……?」 「まーくん、まだ1日あるよね」 「ええ……?」 硬くなった股間を腹にぐい、と押し付けてやると、 「や、やさしくが、いいです」 恥ずかしそうに言うのが、また可愛いかった。 下着のボクサーパンツの股繰りを捲った。性懲りもなく勃ちあがった性器を押し付ける。可哀想に腫れ上がってはいたが、つい先刻まで犯していた穴だ。まだ柔らかかった。 正宏の肩を掴み、腰を寄せる。熱い入り口を強引に貫く。 「ぅぐうぅううっ」 「わぁ!まーくん、まだ奥が濡れてるね」 「や、やさしくないぃ」 「うん」 「ひどいよぉ」 「うん」 「あ、や、あ、ううっ」 「これ、このかたち。ちゃんと覚えてね。僕しか入れちゃダメだよ?」 「すき、だから?する?」 「うん。今ね、僕たちは愛し合ってるの。」 「あい……?」 「うん。愛してるよ、まーくん。」 「んぁ、アー……っ」 いいように言われ誤魔化されながらも、されているのは相変わらず容赦の無い強姦だったのだが、愛情を理由にすれば納得しやすいらしかった。 正宏はまた泣かされ、何度も気を失うほど攻められ、やがてカーテンの隙間から朝日の差し込む時間になった。 とうに限界を過ぎてダンゴムシのように丸まり、もう無理だとガクガクと震え力無く泣いていたが、 「もう一回!」 両手を合わせおねだりする超ご機嫌な雪也を前になす術も無かった。 おわり

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