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第5話

成人式、擦れ違えっかな…… 無理、か… ヨロヨロとその場にしゃがみ込む。 身体がしんどい。 怠い。 疲れた。 さっき痛み止めを飲んだのに効きやしない。 どこが痛いのかもう分からない。 全身が痛いんだ。 もう、限界なのかもしれない。 明日から入院だ。 今日だって我が儘を言って伸ばしてもらった。 準備をしたいから、挨拶をしたいから、最期ならさせて欲しいと何度も頭を下げてやっと手に入れた猶予。 最悪の顔色は妹から化粧をしてもらってなんとか整えた。 この身体の限界はもうそろそろらしい。 大学の健康診断で再検査をもらった時はこんな結末を想像出来なかった。 入院して、金をかけて手術をしても5年生きられる可能性は36%。 64%の確率で5年生きられないんだってよ。 とんだ博打だ。 だから、別れを告げた。 “別れ”が辛くなる前に。 俺は、酷い男だと思っていて欲しい。 せめて、そう思って心の中に住まわせて欲しい。 もし、生きられたとしても再発や転移の恐怖に脅かされる。 きっと心配してくれるはずだ。 それが、辛い。 自分のこと以上に辛そうな顔をさせたくない。 なんて我が儘なのだろう。 なんて、傲慢なのだろう。 だけど、……本当はこわいから。 36%ってなんだよ 俺は、あいつと生きられないのかよ 俺が、同性を好きになったからか 好きだって伝えたからか これは、罰なのか… 死ぬのがこわい。 だから、心の中からも殺さないで。 せめて、その心の中では生きさせて。 時々で良いから思い出して。 憎んでいてて良いから。 最低な奴だと罵ってくれ。 本当は、泣き喚きたい。 死にたくない。 生きたい。 あいつの隣で笑っていたい。 ずっと。 もっと長く。 長くが良い。 助けてくれ。 助けてくれ…。 そっと目を閉じた。 涙が零れないように。 君のしあわせを願って。 愛しているから嘘を吐いた。 ごめん、愛してる。 愛してる。 世界で1番。 誰よりも。 痛みは生きているから感じられるもの。 喜びも。 なのに俺は最低な方を選んでしまった。 最後に君を傷付けた、その事実を抱いて明日を生きさせて。 さよならも言わない俺を一生恨んで

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