14 / 41
インタビュー「吉田龍平」2
とりあえずはまず話を聞こうと
「そうそう忘れてました。パソコン、持ってきていただけましたか」
時臣が1番大事なことだったと話を変える。そのパソコンに問題が来ていればなおいいのだが…
「はい、持ってきました。問題は昨日来ていたので一つ残ってるんですが…あ、そうだ問題で思い出しましたけど、俺ね、この問題解くと必ず頭痛がするんです」
「頭痛が…?」
時臣は復唱してから、立ち上げたパソコンを借りて問題を確認する。
建築関係の問題で内容はさっぱりだが、しかしそれ自体におかしいところは無いように見受けられる。
「この問題を解くと頭痛がするのか?それとも解き終わってから?」
「もう途中から頭痛は始まります」
中条はスマホでその画面を写し、念のためにデジカメとフィルムのカメラでもそれを収めた。ついでに動画でも。あらゆる方法でそれを撮っておきたかった。
「取り敢えず、スマホの画面を富山先生に送っとく」
「ああ、頼む」
パソコン画面を撮影したところで写る保証がないので、確証が得られるかは難しいことではある。
とりあえず何枚かを送ってみた。
「直接富山先生に見せられたらいいんだがなぁ」
悩ましい所だ。
「USBメモリーにコピーとかだめなんですかね」
龍平が言ってくれるが、
「さっき話した伊藤瀬奈くんの所で判ったんだけど、リモートで管理されてる気配があるんだよこのPC。となるとコピー取ったのもバレそうでな。龍平くんの身が危険になるから、そう言うことは避けたいんだ」
高円寺のビルに学生を集めている者たちが、集めた子たちに直接何かしないという保証がないのだ。そうである以上、危険な可能性があり得ることは避けたい。
「そんなにやばいんですか?あそこ」
「そのやばいかどうかもわからないんだけれどね。まあ…追ってきた人間の顔を見たら逃げさせて車に突っ込ませたり、ビルの高いところから飛び降りさせることができるくらいには…危険だな」
そう聞かされ龍平もなんだか怖くなった。
「昨日、6時過ぎて帰ったことをちょっと注意されたんですけど…今まで7時に帰ったこともあるのに何も言われなかったんです。急にそう言われて…今思えば母さんとこに言った日も帰りは6時超えてた気がします。何か向こうで調べがついたんでしょうか…」
時臣もあの日高円寺のビルに入るまで見届けて、その時間も確認していたから確かに5時30分だったなーと思い出す。
「いや、あの日は6時は超えてなかったよ。5時半に高円寺のビルに戻ってる」
時臣が言ってくるのに龍平はーえ…ーと思うが、さっきここにくる時に唯希があの日所長が尾行してたと言っていたのを思い出した。
「あ、その日俺、篠田さんに尾行され てたって聞きました。6時は過ぎてなかったんですね。じゃあなんで急にあんな事言われ始めたんだろ」
もしかしたら過去に何もない龍平への施術が強くなったのかもしれない、とは時臣たちも考えたが、今はそれをまだ言わないでおいた。
「なんだか怖くなってきた…。俺、もうあそこに戻りたく無いです。昨日もどうやったら辞められるのか考えてて…」
「私もこの子をそこへはもう行かせたく無いです」
時臣も同じことを考えてはいた。
向こうが何かしているのであれば普通の生活に戻す道理がない。だがその『なにしている』がまだはっきりしない以上、もう少し居てもらうことになるかもしれなくて、今ははっきりと返答はできなかった。
「そういえば問題解いてる最中に頭痛するとか言ってたけど、さっきのは昨日の残りって言ってたよね。昨日もだったか?」
それを聞いて龍平は思い出したように話し始めた。
「そう!そうなんです。一昨日注意された後、1時間くらいしてから問題が来たんですけど、いつもは時々多いなって思う時で3つくらいなんですが、一昨日は4つ来て、しかも内容がみっしりあって昨日は午前中いっぱいひどい頭痛でした。昨日のも4つ来て、今日持ってきた一個はあまりの頭痛でできなかった残りなんです。今日帰ったら早くするよう言われるはずです」
龍平の顔はもううんざりしている。
頭痛が起こる理由が判らないが、問題数が増えたと言うことはマインドコントロールを強化してきているかもしれなくて、それによって探偵と会った時の反応を強くしようとしているとしか思えなくなってきた。
調査のためとはいえ、戻すのは危険な感じだ。
「問題を解いて頭痛が出るってことは、問題の画面に何かがあるってことだとは思うんだけど…」
富山 先生から連絡ないかとスマホを弄んでいる中条も、どこかモヤモヤした感じでソファで足を組んだ。
「身体に異変を感じてるなら…帰せないよなぁ…もうそれで医者に行って、で終わりにしていいのかなとも思うけど…ん〜〜」
考えがまとまらない。問題の画面に何かあるのかとか、相手の出方がまるで判らないとかそればかりが先に立ち、龍平の今日をどうしてやったらいいのか悩んでしまう。できれば危害がない方へ行かせたい。
そんな状況をみて唯希が
「取り敢えず休憩しませんか?」
いいタイミングでタブレットを持ってきた。
「このタブレットから好きなの選んでください。お茶にしましょう」
場を和ませるためにニコッと笑って避 けてあったメニュー用のタブレットの画面を開いて龍平と恵子の前に置く。
その時龍平のお腹がきゅう〜っと鳴って、笑いが漏れた。
「ちょっと緊張しちゃって昼食べてなくて。料理見たら腹減ってきちゃった」
へへっと笑う龍平に、もう!恥ずかしい!と恵子は肩を叩き、
「母さんが払うからともかく何か食べなさい」
とタブレットをを持たせる。
「支払いは気にしないでください、知り合いのところなんで。龍平くん、好きなの食べてね」
注文のタブレットを見ている龍平は恥ずかしそうに頷いた。
それから1時間ほど、今回の件も織り交ぜながら世間話や探偵のことに興味を持った龍平の質問やらに応える時間を過ごしていると、富山 先生からの連絡が来た。
「先生、今回はありがとうございます」
『いやいやいいさ。今日は午後休診だったからね』
「休診のところ返ってすみません」
『気にしないで、でね、さっき送ってもらった画像だけどね、一緒に綾瀬くんとも見たんだが、ちょっと気になるんだよね』
綾瀬というのは富山の知り合いのホワイト魔術師というか、良い意味でマインドコントロールをかけてくれる人だ。整体師の免許を持っているらしかった。
「気になるところですか」
『うん。今画面見られるかな』
時臣は自分の前にあったスリープモードのノートパソコンを起こし、先ほどの問題の画面を開いた。
『連写の何枚かを送ってもらったんだけどね、何枚かほんの少し問題文の背景が色が違うのわかる?』
スピーカーにしているスマホから流れてくる富山の声は、ノンビリとしているが断固とした物言いをする。
「え〜っと…」
連写で画像の背景が違うということは、これをじっと見ていても変わるということなんだろう…と思い、問題の出ている画面をじっと見ているが、それっぽいものは…
時臣はサングラスをかけていることに気づいて、それを外すのに万が一を考えて龍平と恵子に隣の部屋へ行ってもらうことにした。
ともだちにシェアしよう!

