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波乱の予感

午後の保健室。 静かな空気を裂くように、机の下で結衣の指先が川村の腿を這い上がっていく。 「……やめろ」 川村は書類に目を落としたまま、掠れた声で吐き捨てる。 結衣は笑みを押し殺し、さらに深く手を滑り込ませた。 ――ガラリ。 不意に扉が開く音。 「失礼します」 入ってきたのは生徒会長・聖。真面目な眼差しで机に歩み寄り、丁寧に頭を下げた。 「先生、文化祭の件で……」 「……なんだ」 川村はいつものように無愛想な声で応じる。 だが机の下では、ベルトが外され、布がずらされていた。 結衣の指が、熱を帯びた先端に触れる。 「っ……」 小さく、押し殺した声が洩れる。 聖は眉を寄せつつも話を続ける。 「予算の割り振りで、一部修正が必要で……」 だがその時。 結衣の指先が、敏感な先端をゆっくり擦った。 「……っ、は……」 川村の息が震え、机の下で膝が跳ねる。 聖が一瞬、言葉を止めた。 「……川村先生」 視線が鋭くなる。 「……先生、何か……エロいことしてます?」 その問いに、川村は答えられなかった。 代わりに―― 「やっ……あ、……っ、んん……っ……!」 結衣がわざと強く扱った瞬間、抑えきれない喘ぎが次々と漏れる。 低く、甘く、堕ちていくような声。 聖の目が大きく見開かれる。 「……まじで……そうなの」 机の下で何が行われているのか、もう疑う余地はなかった。 川村の頬は赤く染まり、無理に言葉を繕うことすらできない。 その姿そのものが、すでに答えになっていた。 川村の甘い声が室内に溶けていく。 机の上では冷静を装っていても、机の下では結衣の指に翻弄され、喘ぎを抑えられなくなっていた。 川村の乱れた声を聞いた聖は、耳まで赤く染めながらも、じっと見つめていた。 「……やっぱり、そうなんだ。川村先生、さっきからずっと……」 小さく呟くと、川村が慌てて顔を背ける。 「ち、違うっ……! これは……」 否定の言葉を紡ごうとするが、その瞬間、高瀬の指が一際強く先端を弾いた。 「ひあっ……!」 甘く掠れた声が零れ、机の下でびくんと腰が跳ねる。 「川村先生、やっぱり……エロいことされてるじゃないですか」 聖が少し拗ねたような声音で言う。 川村は耳まで真っ赤になり、震える声で言い訳を探すが、何も出てこない。 その代わりに口から洩れるのは、途切れ途切れの喘ぎだけ。 「んっ……だ、め……っ」 「ふふ、もう答えになってるじゃん」 高瀬が意地悪に囁き、さらに動きを速めた。 「や、あぁっ……あっ……!」 川村の声が抑えきれず、喉から零れ落ちる。 聖はその様子に目を奪われ、胸の奥がじりじりと熱を帯びていく。 「……そんなの、俺も……やってみたい」 気づけば、口に出していた。 「……聖……?」 川村が目を見開き、涙に濡れた瞳で聖を見る。 「俺も、川村先生に……触ってみたい。さっきから、ずっと……気になって」 聖の声は震えていたが、その瞳は真っ直ぐで、欲を隠そうともしなかった。 高瀬は満足げに笑いながら、川村の身体を支えるように撫でる。 「だってさ。川村さん、どうする? 聖くんも仲間に入れてほしいって」 「そ、そんな……っ、むり……!」 川村は首を振るが、同時に高瀬の手つきに追い詰められ、否定の言葉に説得力はない。 聖は机の下をそっと覗き込み、赤くなった顔のまま、唇を噛んだ。 「……俺にも、教えてください。川村先生が、どんな風に気持ちよくなるのか……」 その真剣な声に、川村の心臓が大きく跳ねる。 「な……やめろ……聖……おまえまで……っ」 震える声で制止するが、熱に浮かされた身体は逆らいきれない。 聖の指先が恐る恐る伸び、結衣の手の隣に触れた。先端をかすめた瞬間―― 「っ……ぁ……!」 川村の喉から抑えきれない声が洩れる。 「……先生……ここ、すごく熱い……」 聖は顔を真っ赤にしながら、ぎこちなくも夢中で指を動かす。 「や……だめだ、聖……っ、触るな……っ!」 川村は必死に否定するが、指が先端をなぞるたび、腰が小さく跳ねてしまう。 「先生……震えてる。……気持ちいいんですよね?」 聖の問いかけが、逃げ道を塞ぐ。 「ち、違う……っ、これは……っ」 言葉をつなげようとしても、快楽に掻き消され、息が乱れるばかり。 結衣がさらに後押しするように根元を握り込み、聖の指先が先端を擦り上げる。 「ひ……あっ、あぁ……っ!」 耐えきれずに声が溢れ、川村の身体が大きく跳ねた。 「……っ、あ、や、だめ……っ!」 その悲鳴じみた喘ぎとともに、川村は絶頂に呑まれていく。 「ぁぁ……っ、ああああっ……!」 彼の欲が飛び出て2人の手を汚す 机の下で高瀬の指がようやく止まり、川村はぐったりと椅子に凭れかかった。 肩が大きく上下し、荒い息が収まらない。 額にはうっすらと汗、耳まで赤く染まった顔を机に伏せるように隠した。 そんな川村を見つめていた聖が、ふと小さく息を吐く。 「……川村先生って、いつも無愛想で近寄りがたいのに」 視線を逸らさず、ぽつりと続ける。 「……こんな顔、するんですね。……エロくて、びっくりしました」 「~~っ!!」 川村は反射的に顔を上げた。 「ば、ばか……言うなっ……!」 真っ赤になって睨むが、息も言葉も震えていて迫力がない。 高瀬がにやりと笑い、肩を竦める。 「ほら、先生。バレちゃったな。普段とギャップありすぎて、聖くんも混乱してんじゃん」 川村は机に額を押し付けるようにして顔を隠す。 「……俺は教師だぞ……聖に、こんな姿……見せて……」 震える声で呟いた。 その言葉に、聖は小さく首を振る。 「……でも、俺も……川村先生に言われたくないですよ」 「……え?」 「だって俺、生徒会長なのに。真面目だって周りから言われて……。なのに、こんなこと、知っちゃった」 川村は驚いた顔で聖を見つめる。 聖は耳まで赤くしながら、けれど真剣な目で言葉を続けた。 「……でも、それでいいんじゃないですか。俺も思春期だし。……気になるのは、当たり前だから」 「……っ」 川村は言葉を失い、目を泳がせる。 その様子を見て、高瀬は満足げに笑った。 聖が小さく息を呑む。 「……結衣先生も、あの……そういうこと、できるんですか……?」 「そうゆうことって?」 思わず聞き返す 「エロいこと...」 私は思わず手を止め、顔が一気に真っ赤に。心臓がドキドキと暴れ出す。 「え、えっと……そ、そういうのは……あ、あの……あんまり……」 言葉がつっかえ、机の上の資料を手で押さえたり、足をバタバタさせたりして、完全に挙動不審になってしまう。 「ちょ、ちょっと、な、なに見てるんですか……っ」 聖はちょっと驚いた顔で、でもじっと私を見つめる。 「……でも、見てみたいです……」 「え、えっ……な、なに……そんなこと……っ」 口がうまく動かず、言葉が跳ね返されるみたいに声が裏返る。 その様子を見て、川村先生がくすりと笑った。 「……俺も見たいな。結衣の、そういう弱いとこ……」 私は思わず飛び上がるほど動揺して、椅子に座ったまま両手で顔を覆う。 「は、は……はぁっ!? な、なに勝手に……そ、そんなこと……っ」 聖も小さく笑みを浮かべつつ、真剣な眼差しで私を見上げる。 「川村先生も見たいって言ってるし……俺も、見たいです……」 私の顔はさらに熱を帯び、手のひらから汗が伝う。心臓がバクバクして、息も乱れてしまう。 「あ、あぁぁっ……ま、待ってください……っ!」 思わず机に突っ伏して、声も出ないくらいに動揺する私を、二人は面白そうに見ている。 普段は威厳のある高瀬先生が、今や完全に子供みたいにパニック状態。 その様子に、二人の目がますます輝きを増す。 「……でも、先生。本当にいいんですか? 聖くんの前で……」 そう言った瞬間、自分の声が思ったよりも掠れていることに気づき、胸がざわつく。 川村は真っ赤な顔で、それでも必死に言葉を絞り出した。 「……見せて……くれ。俺だけじゃなく……聖にも……」 「っ……そんなの、だめです」 思わず強く言い返す。聖に見られるなんて、絶対に恥ずかしすぎる。 だが、聖が一歩近づき、真っ直ぐに私を見つめてきた。 「……俺からもお願いします。結衣先生を……ちゃんと見たい」 二人の声が重なり、心臓が跳ねる。 「や、やめてください……ほんとに……」 強がって笑おうとしたが、声は震えてしまった。 川村がかすかに手を伸ばし、私の指先をそっと掴む。 「……頼む。結衣のこと、見せてくれ……」 沈黙。 抗いたいのに、二人の真剣な瞳が突き刺さって逃げられない。 「……っ……ほんとに……意地悪なんだから……」 ようやく吐き出した言葉は、負けを認めるように小さかった。 私は俯きながら呟く。 「……わかりました。……見ててもいいです。ただし、触れるのは先生だけ……」 その瞬間、川村は安堵したように大きく息を吐き、聖は喉を鳴らして唇を噛んだ。 そして、私の胸の奥には、じんわりとした熱と羞恥が入り混じった。

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