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狼の目

翌日。 始業のチャイムが鳴り、私は保健室の机を整えていた。 昨日の出来事がまだ鮮明に残っていて、胸がざわつく。 (……川村先生、どんな顔で来るんだろう) ドアが開く音に、思わず振り返る。 そこには川村先生が立っていた。 いつもの無愛想な表情……のはずなのに、その耳はほんのり赤い。 「……おはようございます」 私が先に声をかけると、川村先生は小さくうなずき、無言のまま机に鞄を置いた。 数秒の沈黙。 昨日のことがあるせいで、互いに空気が重くなる。 私は思いきって、からかうように微笑んだ。 「先生……昨日のこと、忘れてませんよね?」 川村先生の肩がわずかに揺れる。 「……忘れられるわけ、ないだろ」 低く掠れた声。昨日とは違い、もう隠そうとする気配はなかった。 「じゃあ……続きをしましょうか?」 わざと机に寄りかかりながら囁くと、川村先生の視線が一瞬で熱を帯びる。 「……ここで、また……?」 「ええ。保健室は、私たちの仕事場ですから。――鍵、閉めれば大丈夫ですよね」 川村先生は苦しそうに息を吐き、視線を逸らした。 「……お前、ほんと……怖いくらいだな」 それでも彼の手は、机の鍵へと伸びていた。 カチリと音が響く。 二人だけの密室。 私はそっと川村先生に歩み寄り、彼の胸に指先を置いた。 「さあ先生。昨日は“触ってほしい”って言いましたよね。――今日は、どこまで素直になれるか……見せてください」 川村先生は一瞬ためらったあと、ぎゅっと拳を握りしめ、私を見下ろした。 「……もう隠さねぇ。……だから、全部……頼む」 その言葉に、私は微笑み、彼の唇へと顔を寄せた――。 川村先生の言葉に、私の胸は熱くなる。
――「全部、頼む」
無愛想で近寄りがたいはずの人が、今はこんなにも素直に欲を口にしている。 私は彼の顎にそっと手を添え、顔を近づけた。 
「……じゃあ、まずは――口で、欲しがってください」 彼の眉がぴくりと震え、喉が上下する。
 「……く、口でって……」
 「そう。昨日は“触ってほしい”って言えましたよね?  今日はもう一歩。ちゃんと私に、“してほしいこと”を表してください」 沈黙。保健室の静寂に時計の秒針だけが響く。
川村先生は拳を握りしめ、真っ赤な顔を俯かせていた。 やがて、掠れる声がもれる。 
「……ゆ、結衣に……その……くち、で……してほしい」 耳まで真っ赤に染めて言う彼に、私は堪えきれず小さく笑ってしまった。 「違います。口で求めに来てください」 一瞬、彼の目が揺れる。 拳を強く握りしめたまま、息を詰めて……そして、堪えきれないように私を引き寄せた。 触れるだけの唇。 震えが伝わってくる。 だが次の瞬間には、抑えていたものが溢れ出すみたいに、深く、乱れるように口づけてきた。 「……んっ……」 必死さと切実さが混ざったそのキスに、胸が熱くなる。 深くて、丁寧に でもちょっと激しく 
「……素直でいい子ですね。先生」 私は机の端に彼を腰かけさせると、ゆっくり膝を折って彼の前に座った。
パンツ越しに硬くなったものが熱を主張している。
そっと手を添えると、彼の体がピクリと跳ねた。 「っ……お、おい……ほんとに……」 
「もちろん。――“全部、頼む”って言ったのは先生ですよ」 布をずらして露わになったものは、昨日よりもさらに張りつめていた。
私はわざと一度視線を上げ、彼の赤い顔を見つめながら、先端に唇を触れさせる。 
「……っ……!」
 川村先生の喉が大きく震え、机をぎゅっと掴む音がした。 唇で包み、舌でなぞると、彼の腰が堪えきれず前に突き出される。
 「だめ……っ、そんな……っ」
 「声、我慢しなくていいですよ。――昨日みたいに、素直に言えばいいんです」 舌先で弱い部分を攻めると、彼はもう耐えられないように声を漏らした。
 「っ……あ、あぁ……っ……気持ち……いい……」 机に背を仰け反らせ、必死に耐える姿。
昨日は触れるだけで必死だった彼が、今日は自分から欲を吐き出している。 私はさらに深く咥え込み、喉まで受け入れる。 
「……っ、だめ、そんな……もう……っ!」 
腰が大きく跳ね、机がギシリと音を立てた。 「――ほら、出していいんですよ」
 その囁きと同時に、川村先生は堪えきれず、熱を吐き出した。 喉を震わせながら飲み込み、口を離した時、彼は顔を真っ赤にして肩で息をしていた。
机に突っ伏し、震える指で額を覆う。 「……っ……もう……だめだ……立ってられねぇ……」
 「ふふ、かわいい。昨日より素直でしたね」 私は立ち上がり、彼の乱れた髪を撫でた。
その指先に触れるだけで、彼の体はまだ小さく震えていた。 「……先生、これからどうします?」 
「……どう、って……」 
「だって。昨日より素直になれたんですから。――明日は、もっと先に進めますよね?」 私がからかうように言うと、川村先生は顔を伏せたまま、かすかに頷いた。
 「……お前、ほんと……怖いくらいだ……」 
「でも、楽しみでしょ?」 耳まで赤くしながら、彼は否定できずに黙り込んだ。
私はそんな彼を見て、小さく笑う。 ――明日、さらに素直な先生に会える。
そう思うと、胸がざわつくほど期待でいっぱいになった

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