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リビングを灯したままの電気。
それが意味をなさなくなった時間帯。
床に座り込んだままの愛賀は呆然と玄関の方を見つめていた。
産まれたばかりの赤ん坊を連れ去った俊我の面影を。
この腕にはやっとの思いで産んだ小さな命が確かにあった。
確かにその温もりがあった。
まだ慣れなくて、だけど落とすまいとしっかり抱いて、愛賀の腕じゃ不安だったはずなのに、それでも寝てくれた愛おしい我が子。
穏やかに眠る我が子が愛しくて、病院にいる間、一度も来れなかった俊我にもすぐに見てもらいたくて、それから、「あなたとの子どもが産まれて本当に幸せ」と感謝の言葉を述べたかったのに。
愛していたはずの人から出た言葉が。
──愛賀。お前のことが必要なくなった。
心が追いつかなかった。どうして?
僕の何がいけなかったの。
何で必要がなくなったの。
僕があんなところで働いていたからいけなかったの。
僕にくれた愛情は全て嘘だったの。
「どうして⋯⋯俊我さん⋯⋯」
胸が痛くて、込み上げるものがあってそれが溢れるはずだった。
しかし、散々泣き腫らした目から涙は一滴も出そうになかった。
もう、何もかも終わり。
絶望に打ちひしがれていた。
そんな時、玄関の方から音がした。
それが耳に届いた時、改めて目を向けた。
俊我さんが帰ってきた?
あの夜の出来事は嘘だったのか。
俊我を怒らせることをしてしまったから、赤ん坊を取り上げられることになったのかもしれない。
何から何までしてもらっているのになんて愚かな、なんて不甲斐ない。
だったら、謝らないと。
そう思い、立ち上がった愛賀はされどふらふらとした足取りで向かうとした。
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