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だが、やってきたのは数人の男性。
皆、揃いも揃って同じ服を着ていた。
乱交しに来た人達かと一瞬思ったが胸元を見てみると、見たことがあるロゴの引越し業者だった。
なんで、引越し業者が?
疑問を浮かべる愛賀のことを見るなり、そのうちの一人がぎょっとする。
「え、人が⋯⋯」
「おい。いいから、さっさとするぞ」
「あ、え、はい⋯⋯」
上司らしい人に促され、後ろ髪を引かれつつもいそいそと家具を運び始めていた。
一体これはどういう状況なの。
「え、あの、俊我さんは⋯⋯」
「しゅんが、さん? ⋯⋯あー、個人情報なんでこれ以上言えませんね」
「僕の赤ちゃん、知りませんか?」
「え、赤ちゃん⋯⋯?」
「僕、確かに産んだんです。この腕の中に俊我さんとの子どもがいたんです。どこに行ったか知りませんか?」
「あ、いや⋯⋯俺に言われましても⋯⋯」
詰め寄るように言うと業者の中で若そうな青年が返答に困っていた。
だが、困っているのは愛賀の方だ。俊我に突如として赤ん坊を取られ、喪失感に苛まれていた時に引越し業者が来ては勝手に運び出しているのだから、こちらが今の状況を何一つ理解ができてない。
「赤ちゃん知りませんか?」と再度尋ねた時、その上司が横から入ってきた。
「俺らはただ仕事しているだけなんで。作業の邪魔になるんで外に出て行ってもらえます?」
「え、え? 僕はどうしたら、どこに行ったら⋯⋯っ」
「そんなの俺達に聞かれても知りませんよ」
どいたどいたと困惑する愛賀の背中を押し、その勢いで玄関の外に出されてしまった。
開け放たれた先で黙々と作業を続ける業者達。
愛賀は呆然と立ち尽くしていた。
赤ん坊を取られた。
自分のことは必要ないと言われた。
住む家も追い出された。
僕はどうしたらいいの。
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