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ひたひたと歩く。
しばらく歩いてから裸足であったことに気づくが、もうどうでもいい。
それよりも僕はどこに行けばいいの。
誰かに、俊我さんに言ってもらわないと自分で何をしたらいいのか分からない。
自分では出られない狭いところから連れ出してくれ、住む家も美味しいご飯も愛おしい人との愛の結晶も、何もかも与えてくれたものが一夜にして全て奪われた。
己の欲のために抱いてきた客達とは違うと思っていたのに、愛してくれていたと思っていたのに、自分の思い違いだったの。
「僕の⋯⋯赤ちゃん⋯⋯」
行く宛てもなく、重たい足取りで歩く。
時折こちらへ歩いてくる人が異様な目で見てくるが、愛賀の視界には映らなかった。
見つけてあげないと。
騒いでしまったから泣いている。やっと寝られたのに起こしてしまった。あやしてあげないと。
今もきっと泣いている。
「僕の⋯⋯赤ちゃん⋯⋯」
まだ名前も決めてなかった。
お腹にいる時から考えて、いっぱい考えて、どれもこれも良くて、産まれてからも決められずにいた愛おしい我が子の名前。
俊我との子ども。
自分達の名前が似てるから、それに合わせた名前にしようとしていた。
「僕の⋯⋯赤ちゃん⋯⋯」
どこ、どこにいるの。
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