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誰かに押さえつけられているかのように重くて、億劫な目を開けた。 寝てはいけないのに寝てしまった。 俊我さん、もう行ってしまったかな。 ぼやけていた視界が徐々に晴れ、その先に映し出されたのは白い天井。 "お店"の天井ってこうだったっけ。 俊我さんと住んでいる部屋もこうだったっけ。 違う。俊我さんは赤ちゃんと一緒に行ってしまったんだ。 「⋯⋯僕、の⋯⋯赤ちゃん⋯⋯」 掠れた声で言う。 遠くから扉が開く音。 それから規則正しく、そして気遣いを感じられる足音が近づいてきた。 「ああ、目を覚まされたようで良かったです。外傷もないようですし、このまま何もなければ退院──⋯⋯」 主治医らしい穏やかな口調で懇切丁寧に説明していたが、愛賀は目もくれず、耳も届いていなかった。 が、思い出したかのように小さく言った。 「僕の、赤ちゃんは⋯⋯?」 「あなたは妊娠してませんよ。倒れていたところを通行の方が救急車を呼んでくれたのですよ」 「嘘⋯⋯」 意識が遠のくのを感じた。 嘘。絶対、嘘。 「ねぇ、嘘を吐かないで。僕は妊娠していたんです。このお腹の中で大事に大事に育ててきたんです」 自身のお腹をさする。 あの時の重みは確かに感じていた。だから妊娠してないなんて、嘘。 「初めての子だったから、産むのに時間がかかったけど、無事に産まれた産声を上げた時の感動も、慣れない抱っこでようやく寝た可愛らしい寝顔も全部全部覚えているんです。夢ではありません」 「姫宮さん、落ち着いて。まだ寝てないと」 「ここに赤ちゃんがいないのはどこかに隠したの? 返して、返してよ! 僕の赤ちゃん!」 服に縋るように掴む愛賀に「落ち着いてください」とそれでも冷静な口調で窘める先生の言葉をかき消すように泣き叫び狂う。

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